孫よ


   
一緒に体験記朗読/遺品の全国収集



  被爆から六十年の歳月が、被爆者に老いを強いる。平均年齢は七十歳を超え、自らの肉声で体験を語り継ぐことが年々難しくなっている。その記憶を、孫の世代に、さらにその次の世代にどう伝えるか―。被爆地広島で、新しい伝え方を模索する動きが広がり始めた。
 広島市中区、平和記念公園にある国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は今年三月から、所蔵する被爆体験記や原爆詩の朗読事業を始めた。
 読み手であるボランティアが朗読するだけでなく、聞き手の修学旅行生たちも声に出して読む。そうした双方向での「追体験」が好評だ。貸し出し用に体験記や原爆被害の説明ビデオなどを組み合わせた「朗読セット」も五十ほど作り、すでに百件近い予約がある。



継承の在り方 新たな試み



   広島、長崎両市にある原爆資料館や追悼祈念館の計四館は昨年七月から、被爆者の遺品や手記、原爆死没者の遺影の全国収集に取り組んでいる。焼けこげた遺品、あどけない笑顔…。無言のうちに、犠牲者の生きざまと死を、雄弁に物語る。そんな貴重な資料の散逸を防ぐため、四館は二〇〇六年三月末まで提供呼び掛けを続ける。
 広島の原爆資料館による若い世代向けの連続講座「中・高校生ピースクラブ」は今年で四年目。資料館の被爆資料や公園内の碑を案内する「ヒロシマ ピースボランティア」も最近は、若手の活動が目立つ。広島県原水協などは今年から、公園内をガイドする「ピース・ナビゲーター」の養成講座を始めた。
 これまで案内役を担ってきた被爆者たちをサポートしようとの試みだ。


【写真説明】上=追悼祈念館が始めた被爆体験記の朗読会(3月23日)、 下=広島の原爆資料館が全国に呼び掛けて寄せられた原爆犠牲者の遺品や被爆資料



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