中国新聞社
祈りの響き<4>平和の鐘<動画あり> '10/7/29

 ▽重く心に染み渡る

 綱を引く。たわんだ鎖が音を立てる。重く、柔らかい鐘の音が、照りつける日差しをほんのわずかの間、忘れさせてくれる。消えゆく余韻と入れ替わるように、セミ時雨が戻ってきた。

 「平和の鐘」は広島市中区の平和記念公園内の北側にある。1964年、市民の寄付で設けられた。高さ1・7メートル、直径約1メートル、重さ1200キロ。側面の浮き彫りは国境線のない世界地図。「世界は一つ」を表す。

 北海道小樽市の主婦前田道子さん(66)は突いた後、手を合わせた。65年前の8月6日を思い描いてみる。強い日差し、地面に倒れた人々…。「あんなことは、二度と繰り返してほしくない」

 撞木(しゅもく)の先端部は、2年ごとに取り換える。傷みの分だけ、旅行者や修学旅行生の心に、鐘の音は染み渡っている。(写真・坂田一浩、文・浜岡学)

 動画はこちら

【写真説明】平和の鐘を打ち鳴らす子ども。清らかな音で核兵器廃絶の悲願を世界に伝える



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