中国新聞社
祈りの響き<6> 原爆ドーム<動画あり> '10/7/31

 ▽傷負って立つ「証人」

 夕日が原爆ドーム(広島市中区)を赤く染める。陰影が増し、建物の傷が際立つ。

 被爆の惨状を熱弁するボランティアガイドの声、世界各国から訪れた人々の靴音…。あわただしさは次第に消え、うだるような暑さも引いていく。元安川から冷気が上ってきた。被爆地の一日が終わる。

 原爆ドームは今日も無言で人々を見守った。「でも前に立てば、寂しい、寂しいと、原爆がいまだなくならないことを嘆く声が聞こえるようだ」。南区の北倉哲弘さん(65)は、原爆ドームにカメラを向けた。

 15年前から、片道30分をかけて通い、写真を撮ってきた。「全身に傷を受けながらも、立ち続ける姿に励まされる」と北倉さん。60歳で定年退職してからはほぼ毎日、「無言の証人」と対話を続けている。(写真・坂田一浩、文・浜岡学)=おわり

  動画はこちら

【写真説明】赤く染まった原爆ドーム。静寂な空気が周囲を包む



MenuTopBackNextLast
ページトップへ