中国新聞社
2011ヒロシマ
'11/8/6
核の平和利用問い直す 被爆66年式典、松井市長が初の宣言

 ▽エネ政策転換訴え

 米国の原爆投下から66年となる6日、広島市は中区の平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。福島第1原発事故により核と人間が共存できるかがあらためて問われる中、松井一実市長は「平和宣言」で被爆体験の継承や核兵器廃絶への取り組みを訴えるとともに、核の平和利用に疑問を投げ掛ける声を紹介し、政府にエネルギー政策の見直しを求めた。

 式典は昨年より5千人少ない5万人(市発表)が参列し、午前8時に始まった。せみ時雨が響く中、松井市長と遺族代表2人が原爆死没者名簿を納めた。

 この1年間に亡くなったか、新たに死亡が確認された被爆者は5785人。名簿はこれで3冊増え100冊、27万5230人になった。併せて長崎で被爆し、遺族の希望で広島に納められる名簿1冊も、新たに1人増え9人となった。

 原爆投下時刻の午前8時15分、遺族代表のパート従業員中根しのぶさん(41)=安芸区=とこども代表の中野小6年田中翔太君(12)=同=が「平和の鐘」をつき、参列者は1分間黙とうをささげた。

 続いて松井市長が初めての平和宣言を読み上げた。公募で選んだ被爆者2人の体験談を引用し、「私たちがすべての被爆者からその体験や平和への思いをしっかり学び、次世代に、そして世界に伝えていかなければならない」と力説。臨界前核実験を繰り返す米国を名指しし、核兵器保有国へ廃絶の取り組みを迫った。

 原発事故をめぐり、脱原発の世論に言及。「早急にエネルギー政策を見直し、具体的な対応策を講じていくべきだ」と政府に訴えた。

 こども代表2人による「平和への誓い」では、三篠小6年福原真拓君(11)=西区=と己斐小6年藤田菜乃歌さん(11)=同=が東日本大震災の被災地と原爆投下後の広島の惨状に胸を痛め、「夢と希望があふれる未来をつくるために、行動していく」と誓った。

 菅直人首相はあいさつで「核兵器による惨禍が二度と繰り返されることのないよう、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に全力で取り組むことを誓う」と述べた。(滝川裕樹)

【写真説明】<上>初めての平和宣言を読み上げる松井市長
<下>松井市長の平和宣言終了とともに約千羽のハトが放たれた平和記念式典=6日午前8時25分(撮影・室井靖司)



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