NPT再検討会議開幕 国連総長、NMD批判

'00/4/26 中国新聞地域ニュース核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説する山本太一外務政務次官=24日、国連本部(共同)

 【ニューヨーク24日共同=伊藤英一】アナン国連事務総長は二十 四日開幕した核拡散防止条約(NPT)再検討会議冒頭の演説で米 本土ミサイル防衛(NMD)構想に触れ、弾道弾迎撃ミサイル(A BM)制限条約を危機にさらし、新たな軍拡競争を促す可能性があ ると指摘、米国を批判した。

 これに対し、午後からの一般演説でオルブライト米国務長官は、 NMD構想について「ロシアの核抑止力をそぐ意図はない。米議会や同盟諸 国だけでなく、ロシアや中国とも話し合いを続けている」と主張。さらにABM制限条約でも「調印後約三十年の間に世界は激変し た」と修正の必要性を強調するなど、自国の立場を正当化する発言 に終始した。

 アナン事務総長はまた、インド、パキスタンの核実験が軍縮に 「深刻な後退をもたらした」と懸念を表明し、包括的核実験禁止条 約(CTBT)の早期発効などを呼び掛けた。

 日本の山本一太外務政務次官は唯一の被爆国の立場から、CTB Tの早期発効とそれまでの核実験凍結、兵器用核分裂物質生産禁止 (カットオフ)条約交渉の早期開始のための各国の譲歩を呼び掛け た後、記者会見し、オーストラリアとの共同による八項目の包括的 提案を説明。会議への正式提案は二十五日になる。

解 説 数値目標なく迫力不足

 核拡散防止条約(NPT)再検討会議での日本の八項目提案は、 今回の会議を「NPTの信頼性を占う試金石」(山本一太外務政務 次官)と重視し、議論をリードしようという被爆国の意気込みを表 す。だが、提案は迫力に欠け、軍縮より不拡散を優先課題とする、 今の日本政府の立場を反映した内容と言える。

(江種則貴)

 提案では米ロに対し、第三次戦略兵器削減条約(START3) の早期交渉開始と「START3を超えたプロセスの継続」を求め た。米ロ以外の核保有国を交えた多国間削減交渉も「適当な時点 で」始めるよう要求した。しかし、「核不拡散・核軍縮に関する東 京フォーラム」が提言した「米ロ戦略核の千発までの削減」のよう な具体的な数値目標や時期には言及していない。

 これらを除けば提案は不拡散に力点を置いた。兵器用核分裂物質 生産禁止(カットオフ)条約について「望ましくは二〇〇三年、遅 くとも二〇〇五年までの交渉終了」と明確な期限付きで提案するな ど画期的な面はあるが、メキシコなど新アジェンダ連合諸国による 「向こう五年間で核兵器を廃棄すると明確に約束する」との提案に 比べれば迫力不足は否めない。新たな核軍拡の火種として今会議の 冒頭から論議を呼んでいる米本土ミサイル防衛(NMD)構想にも 日本提案は触れていない。

 NMD問題やCTBT批准否決などで孤立を深める米国への配慮 が垣間見える被爆国の提案は、その迫力不足ゆえにかえって核保有 国は乗りやすく、会議の最終合意文書に反映される可能性はある。

【写真説明】核拡散防止条約(NPT)再検討会議で演説する山本太一外務政務次官=24日、国連本部(共同)


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