核廃絶 保有国が確約 NPT再検討会議閉幕

'00/5/22 中国新聞地域ニュース

 【ニューヨーク21日江種則貴】ニューヨークの国連本部で開かれ ていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は二十日(日本時間二 十一日)、初めて保有国も一致して、核兵器完全廃絶の「疑いのな い約束」をうたった最終文書を採択し、四週間の会期を閉幕した。 採択文書には核軍縮の将来課題が盛り込まれ、二十一世紀初頭の実 現を目指し国際社会の指針となる。

 国連のアナン事務総長は会議の総括声明で「歴史的合意だ」と評 価した。が、目標設定や時期で多くのあいまいさを残し、実効性を 疑問視する見方もある。

 最終文書は、核兵器廃絶を緊急の課題ではない「究極的目標」と する米ロなど核保有五カ国の主張を退け、完全な廃絶を明確に約束 した。兵器用核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約の五年以内 の交渉終結▽核軍備の透明性増大▽戦術核のさらなる削減―など、 保有国がこれまで抵抗していた、核軍縮目標も明記。メキシコやブ ラジルなど新アジェンダ連合(NAC)諸国が強く主張し、保有国 の譲歩させた。

 このほか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期締結、米ロ の第三次戦略兵器削減条約(START3)の早期交渉妥結、核軍 縮の検証能力の開発、ジュネーブ軍縮会議で核軍縮を扱う補助機関 設置なども盛り込まれた。

 一方、カットオフ条約締結までの分裂性核物質の生産凍結、米国 の本土ミサイル防衛(NMD)構想への懸念、核兵器の警戒態勢解 除などには触れていない。

 四月二十四日に開会した会議には、NPT加盟百八十七カ国のう ち百五十五カ国が参加。初めて非政府組織(NGO)が出席し、伊 藤一長長崎市長が核兵器廃絶を訴えた。日本政府は「カットオフ条 約の遅くとも二〇〇五年までの交渉終了」など八項目の包括提案を 初めて文書で提案した。

 会議は、土壇場になってイラクが、核査察受け入れ義務を求めら れた項目に強く反発し、最終日の十九日に空転。二十日にワシント ンから駆けつけた米国高官がイラクと直接交渉し、最終的には文章 表現を弱めることで合意が成立した。

 会議を通じ、自国の利益に根差す「核保有国のエゴ」が随所にの ぞいた。核軍縮の厳しさを浮き彫りにし、全会一致方 式の前に、妥協を強いられるNPT体制の危うさもあらためて示し た。

 ▽「明確な約束」率直に評価

 秋葉忠利広島市長の話

 最終文書に「核兵器の全面廃絶に向けた 核保有国の明確な約束」が盛り込まれたことは成果の一つであり、 率直に評価したい。しかし、核兵器廃絶の期限が明示されていない など課題が残っている。早急かつ着実に核兵器廃絶を進めるため、 今後もNGO(非政府組織)や世界の都市との連携を図りながら、 いっそう努力したい。


next | back | NPTインデックスページへ