NPT最終文書 広島に歓迎と不満

'00/5/22 中国新聞地域ニュース

 核兵器廃絶に向け、大きな前進―。ニューヨークで開かれていた 核拡散防止条約(NPT)再検討会議が二十日(日本時間二十一 日)、核保有国による核兵器廃絶の明確な約束などを盛り込んだ最 終文書を採択したことに対して、被爆地広島から歓迎の声が上がっ た。ただ、廃絶期限が示されなかった懸念から、保有国にいっそう の努力を迫る必要性を強調する意見もあった。

 「完全ではないが、明るい展望が見えてきた」。広島県被団協の 近藤幸四郎事務局次長(67)は最終文書を高く評価する。「『いくら 核廃絶を訴えても、どうにもならない』とあきらめにも似た気持ち が被爆者の間に出ていただけに、意義は大きい」と話す。

 もう一つの県被団協の金子一士理事長(74)も「やっとここまでこ ぎ着けた。非保有国や非政府組織(NGO)の粘り強い努力が保有 国を追い込む世界的な流れになった」と満足そう。 

核軍縮をめぐる主な動き
1968年7月 62カ国が核拡散防止条約(NPT)に調印
  72・5 米ソが第1次戦略兵器制限条約(SALT1)と
弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約に調印
  79・6 第2次戦略兵器制限条約(SALT2)調印
  91・7 第1次戦略兵器削減条約(START1)調印
(94・12発効)
  93・1 第2次戦略兵器削減条約(START2)調印
  95・5 NPT延長・再検討会議で無期限延長を採択
  96・9 国連総会で包括的核実験禁止条約(CTBT)
採択
  99・10 米上院がCTBT批准を否決
2000・4 ロシア下院がSTART2、CTBTの批准承認
    5・20 NPT再検討会議が核廃絶への明確な約束
などを盛り込んだ最終文書を採択
(ニューヨーク共同)

 広島県原水禁の坂本健事務局長(54)は四月下旬、再検討会議に合 わせ、ニューヨークで原爆展を開き、会議も傍聴した。「核廃絶は 究極的目標だと言って逃げてきた保有国を動かすことができ、大き な成果だ。広島から現地入りし、一定の役割が果たせたと思う」と ほっとした表情を見せた。

 しかし、「核兵器廃絶は約束されたが、期限が付いてなく不安が 残る」と指摘する人も多かった。広島県原水協の藤田厚吉代表理事 (71)は「期限がなければ、結果的にいつまでも延ばされてしまう。 それが保有国の常とう手段だ」と警戒感を隠さない。

 近藤事務局次長や金子理事長は「言葉だけで終わらせず、約束が 実行されるよう、今後も活動を強めないといけない」と、核兵器廃 絶まで広島の役割が変わらないことを強調した。

 広島平和研究所(広島市中区)の水本和実助教授(国際政治)は 「歯がゆさも感じるが、こうした外交の場で合意にこぎ着けない限 り、核軍縮は現実には前進しない。日本の平和団体も、海外のNG Oのように積極的にこうした場に正面から向き合う必要がある」と 話している。

【写真説明】20日、難航した核拡散防止条約(NPT)再検討会議を終え、各国代表と抱き合うバーリ議長(左)(AP=共同)


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