中国新聞


ケータイ異変<3> 見えない相手と
異性との出会い 抵抗なく


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暇さえあればサイトをチェック。ネット世界に「出会い」を求める子どももいる(撮影・高橋洋史)

 エリ(仮名)にとって、携帯電話(ケータイ)は新たな遊び相手を探すための道具だ。広島市立中に通う十五歳。「女子だけで遊んでもつまらん。ケータイがあれば、男子を集めるのは簡単だよ」。けろりとそう言った。

 ケータイには、男子中高生のメールアドレスが数十件、登録してある。友人から「紹介メール」の名で男性のメールアドレスとプロフィルが送られ、エリからコンタクトをとった相手が大半を占める。エリがケータイで作ったホームページを見て、連絡してきた人もいる。

 相手に顔写真を送らせ、気に入ればカラオケなどで会う。「怖くない。友だちを連れて行くもん」。肩を組まれたりしそうになることはあるが、「うまくかわす」と胸を張る。

 県内の私立高に通うマユ(仮名=十六歳)は中学二年のころ、ケータイのネット掲示板を使っていた。「十八―二十五歳の男性。今から来られる人は?」。そんな文句を載せると、たちまち少年から中年男性まで何人もが書き込んできた。

 友だちと連れ立って会いに行ったこともある。食事したり、ドライブに行ったりした。「単に楽しかった。誰もがやってる事、みたいな感覚もあった」

 なかには肉体関係を迫る人もいた。「かわせた私は運が良かったけど、何があってもおかしくない。よく殺されなかった」。中学三年になって自然と掲示板から遠ざかった。

 好奇心からか、寂しさからか。多くの子どもがケータイを駆使し、異性との出会いを広げている。なかには性的な被害を受ける子どももいる。

 広島中央署少年育成官の土井知子さん(42)は、そんな事例をたくさんみてきた。ケータイが「子どもの人間関係の作り方を変えた」と指摘する。文字だけで、さも親しげにやりとりし、簡単に相手に近づく。「自分に限って」と警戒心は薄い。

 一方で、土井さんは「ケータイを取り上げれば解決する問題でもない」とくぎを刺す。「寂しさや性への興味は消えない。大人は子どもの胸の内にきちんと向き合ってほしい」(田中美千子)

(2008.12.22)


ケータイ異変
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