中国新聞


ケータイ異変<6> 動きだした規制
わが子に必要か熟慮を


photo
フィルタリングの利用を訴える広島市のポスター。ケータイ販売コーナーに張ってある=広島市中区(撮影・藤井康正)

 広島市は昨年七月、全国に先駆けた条例を施行した。十八歳未満に販売する携帯電話(ケータイ)について、有害サイトを分類し、閲覧を制限する「フィルタリング」を販売店に義務付ける内容。ケータイのサイトでたれ流される悪質な情報から子どもを守るのが狙いだ。

 フィルタリング機能付きのケータイからサイト接続を試みると、携帯各社のコンピューターが、そのサイトのアドレスを有害サイトのデータと照合。一致すれば接続できなくする。国も今年四月、携帯各社に青少年へのフィルタリングを義務付ける新法を施行。全国統一のルールとなる。

 ところが…。市内の女子中学生(15)は、けろりと言った。「フィルタリング?親に頼んで外してもらったよ」

 フィルタリングは、掲示板サイトや「ミクシィ」など会員同士で情報を交わすソーシャル・ネットワークキング・サービスへの接続もブロックする。他人を中傷する一方的な書き込みや援助交際の温床になりかねない内容もあり、子どもが被害に遭うのを防ぐのが理由である。

 しかし、この中学生は掲示板を級友や他校の生徒と、タレントの話題や学校での出来事などをやりとりする、友だち付き合いのツールとして使っている。「この機能がないと、ケータイの意味がないもん」と言う。

 市も「消費者の権利」「表現の自由」の観点から保護者の同意があれば、フィルタリング解除を認める。一方で、教育関係者の間では「親が危険性を知らぬまま、子どもの要望で解除してしまうのは問題だ」との意見は少なくない。

 市教委青少年育成部は「フィルタリングは完ぺきでない。大切なのはケータイの特性を伝え、使いこなす力をはぐくむ営み」と強調。警察署や携帯会社と連携したネット教育の強化や保護者向けの講座に努める。

 携帯各社も試行錯誤を続ける。うち一社は今月から利用者が指定したサイトはアクセス制限の対象から外したり、メール機能を残してサイトだけ閲覧をできなくする新サービスを打ち出した。

 ケータイとどう付き合うのか。大切なのは大人が実態を知り、わが子に必要かどうかを真剣に考えること。そして、所持させるのなら、責任を持って適切な使用方法を判断し、子どもにその理由を伝える姿勢が不可欠だ。(田中美千子)=おわり

(2009.1.19)


ケータイ異変
<1><2><3>・<4><5>・<6>


子育てのページTOPへ