中国新聞


子どもの携帯 必要か不要か
広島でPTA研究大会
サイト利用の怖さ切実


photo
意見を交わす左から中村さん、太田さん、藤川さん、畠山さん、三上さん(撮影・浜岡学)

 子どもの携帯電話(ケータイ)に絡むトラブルが社会問題化し、大人たちが揺れている。持たせるか、持たせないか―。広島市内で十九日にあった中区PTA連合会の研究大会で、保護者や教育者たち五人が意見を交わした。ケータイの利便性と危うさの双方を、親子で一緒に学ぶことが解決への入り口になりそうだ。(田中美千子、永里真弓)

 ▽「安心・安全」の利点も

 「自制心や判断力が不十分なうちは持たせられない」。江波中PTA会長の藤川雄司さんが強調した。「恐ろしさが先に立つ」とも。勤め先はIT企業。サイト利用の怖さが身にしみている。

 特定の生徒がネット上で攻撃されたり、過激な性描写のケータイ小説が人気だったり。幟町中の畠山洋二教諭が聞いた中学生の実態だ。「そこに大人の目は届きにくい」。危険は、親や教諭を飛び越え子どもを取り囲む。

 携帯電話各社は、有害サイトを分類し、接続できないようにするフィルタリング(閲覧制限)サービスを推進しているが、ドコモモバイル中国チーフあんしんインストラクターの中村考宏さんは「保護者や学校への浸透はまだ低い」との認識を示し、導入拡大に向けた啓発に一層力を入れるとした。

photo
真剣な表情で議論に聞き入る保護者

 ケータイを持たせる保護者にも理由がある。「子どもの居場所が分かって安心」と、国泰寺中PTAの太田晴己さん。吉島東小の三上玲子校長は「持たせたいと申し出る家庭の多くが、安全を理由に挙げる」と言った。

 安全・安心に役立つケータイ。一方で、親の思いとは裏腹に危険とも隣り合わせ。どう向き合うのか悩ましい。五人は「親子の話し合いが必要だ」と一致した。

 司会を務めた広島中央署少年育成官の土井知子さんは、こう意見を集約した。「子どもに持たせる場合も、持たせない場合もその理由を伝える。持たせた場合は、ルールを親子が一緒に決める」

 そして、藤川さんは「ルール作りのために、まずはネットの現状を知るべきだ」と付け加え、保護者の責任の重さを訴えた。

 この後、約四百五十人が集まった会場からも「親子のルール」について、さまざまな実例が報告された。@就寝前にケータイをリビングに置かせる▽サイト接続は禁止▽利用料金の上限を決める―などだ。最後に土井さんが「ケータイのことを子どもと話すことから始めましょう」と呼び掛けた。


■パネリストの発言要旨

登下校時だけ使用を認める

 ▼小学校代表 三上玲子さん ネットは児童に浸透している。学校でも、学習にパソコンを使う。ケータイ普及率は約25%。防犯が目的の家庭が多い。うちの学校では、送迎などの事情によって持ち込みを許可し、授業中は教諭が管理して登下校時だけに使わせている。家庭と連携し、暮らしを豊かにするツールになるよう、子どもを導かないといけない。

個人情報守る大切さ教えて

 ▼中学校代表 畠山洋二さん 大半の中学は持ち込み禁止だが一部、守られていない生徒がいる。授業中にメールし、校内で着信メロディーを流して歩く。取り上げたら、教諭に暴力を振るった事例もあると聞く。友人のアドレスを他人に教えトラブルになったケースもある。ルールを守る姿勢や個人情報の大切さを教えないといけない。保護者も見守ってほしい。

いつでも連絡 GPSで確認

 ▼持たせる親代表 太田晴己さん 小学校低学年だった息子が習い事を始めたのを機に持たせた。いつでも連絡でき、衛星利用測位システム(GPS)で居場所も分かる。息子は家のパソコンを使うが、ケータイ依存ではない。ただ、使い方を話し合う必要性は感じる。行政が学校への持ち込みを一律に禁じるより、家庭で話してルールを決めることが大切だ。

知識やマナー 習得必要では

 ▼持たせない親代表 藤川雄司さん 親が「連絡ツール」として買い与えても、子どもにはおもちゃの延長。心が成長するまで持たせられない。家ではリビングにパソコンを置き、子どもに自由に使わせる。目の届くところでネットの使い方を練習させ、トラブルに対応ができる知識を育てたい。サイトに書き込む際の言葉の使い方など親はマナーの手本も示したい。

閲覧制限利用 PRに努める

 ▼携帯電話会社代表 中村考宏さん 保護者や子ども向けの教室を開き、ケータイの「影」の部分を伝えている。携帯サイトのフィルタリングサービスの利用にも理解を呼び掛けている。家庭のルール、学校のルール、企業努力を融合させて、ネットがうまく活用できるようになればいい。われわれとしては、利用者の声を受け止めて、サービス提供に生かしたい。


(2009.1.26)

【関連記事】
島根の学校、携帯禁止 県教委方針 (2009.1.30)
携帯の持ち込み禁止 山口県内の全小中学校 (2009.1.31)
ネットいじめ、チームで解決 山口県 (2009.1.18)
携帯持ち込み、中学の9割禁止 山口県教委公立校調査 (2008.12.16)
減らぬ子ども被害 携帯原因9割、低年齢化も (2008.12.1)



子育てのページTOPへ