中国新聞


新聞開き広がる世界
NIE、学校現場に着々


 新聞を学習教材に活用するNIE(教育に新聞を)が、広島県の学校現場で広がりをみせている。教員向けの研修会も始まった。2011年度から実施の小中学校の新学習指導要領に、新聞の具体的な活用法が盛り込まれたのが追い風になっている。2〜8日のNIE週間に合わせ、工夫を凝らす学校を訪ねた。(田中美千子)

 福山の幕山小 週1で実践タイム

 福山市の幕山小は、「NIE実践日本一」を目標に掲げる。毎週月曜日の始業前は、15分間の「NIEタイム」を設け、全児童が新聞に親しんでいる。

 メニューは学年ごとに異なる。10月のある月曜日、6年生の2学級では、タブロイド判の「ちゅーピー子ども新聞」が配られた。児童は気になる記事を選び、ポイントに線を引きながら読み進める。ワークシートに、記事を選んだ理由や感想を、書き込んだ。

 一方、低学年は同じ教材を使うが、学び方がもっとやさしい。好きな写真を切り抜いたり、教諭に記事を読んでもらって気付きを発表したりしていた。

 「写真、4こま漫画など、低学年でも興味を持てる内容はたくさんある。活字離れが進む中、まずは新聞に慣れさせたい」。NIE担当の中島悠輔教諭(28)は力説する。「徐々にレベルアップさせ、自ら情報を選び、読み解き、さらには自分の考えをまとめられる力を育てたい」

 毎月1回、「NIE週間」も取り入れている。児童は毎日、お気に入りの記事を家庭でスケッチブックに張り付け、感想を書き添える。新聞を通し、親子のコミュニケーションを促す目的もある。

 成果は出ている。今年の全国学力テストで、同小は基礎的な知識を問う国語A、応用力を試す国語Bともに全国の平均正答率を5・9〜4・9ポイント上回った。特に、国語Aの読解力を求める問題は、全国より14・1ポイントも高かった。

 児童も手応えを感じている。6年吉岡拓哉君(12)は「前より難しい記事が読めるようになった。知らない事を発見できるのは楽しい」と声を弾ませた。

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「世の中レポート」が飾られた湯来中。掲示作品は随時、入れ替えられる

 広島の湯来中 「世の中レポート」

 湯来中(広島市佐伯区)では、全学年が週1回、社会科の学習の一環で、共通の宿題に取り組む。気になった新聞記事を各自で切り抜き、要約文と感想を書き添える「世の中レポート」。2、3年生の優れた作品は、階段の踊り場など、校内4カ所に張り出される。

 「生徒を社会につなげたい」。河野砂智子教諭(51)は、目的をそう説明する。湯来中は市中心部から約20キロ北西の山あいに位置し、全校生徒は47人。他校との交流の機会も少ない。「視野が狭くならないよう、世の中の動きに目を配り、さまざまな考え方があることも知ってほしい」

 5年前の着任当初から取り入れ、生徒にも変化がみえてきた。3年田中沙耶さん(15)は最近、政権交代の関連記事を「レポート」の題材にしている。「テレビ欄しか読んだことがなかったから、最初のうちは苦労した。今は楽に感想が書けるし、テレビニュースも気になるようになった」と自己評価する。

 河野教諭は授業にも新聞を使う。例えば、経済の仕組みを教えるため、今年の3年生に導入した「株式学習ゲーム」。生徒が仮想の所持金1千万円を使い、実際の株価を基に株式を模擬売買する。ヒントにするのが、新聞の経済面や商況だ。

 生徒は紙面とにらめっこ。「この会社は新製品を出したから株価が上がるかも」「インフルエンザがはやっているし、製薬会社も要チェックだ」と考え方の幅が広がってきた。河野教諭は「情報を集め、取捨選択できる力を伸ばしたい。それには新聞が格好の教材になる」と力を込めた。


クリック NIE 「Newspaper in Education」の略。学校や家庭で新聞を教育に活用する運動。1930年代に米国で始まり、現在は世界60カ国以上に広がっている。日本では85年に提唱され、現在は日本新聞教育文化財団(横浜市)が推進。2009年度は、小中高計536校をNIE実践校に認定している。

(2009.11.2)

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