中国新聞


三次市、本年度から配置
学校支援員、学力向上へ密着指導


 三次市は本年度から、市内の小中学校に学校支援員を配置している。児童生徒の学習支援や、多様化する教育ニーズに対応する目的。吉舎町の吉舎中では、支援員が宿題のチェックや放課後の学習指導で学力向上に一役買っている。(見田崇志、余村泰樹)

 「この問題を解いてみい」「頑張って」。吉舎中の放課後の美術室。集まった生徒に、瀬戸川徹さん(26)が声を掛ける。4月から支援員を務めている。

 学力向上や1人で学習する力をつけるため、同中は2007年度から「宿題提出100%」に取り組んでいる。瀬戸川さんはその中心的な役割を担う。朝提出された宿題をチェックする。放課後、内容が不十分だった生徒を美術室に集めて、宿題を完成させるまで見守る。

 「学力を付けるのが第1の目的だが、期限を守ることは社会に出ても役立つ。取り組みの大切さを伝えるため生徒にしっかりと向き合っていきたい」と瀬戸川さんは強調する。

 3年の中村謙吾君(15)は「先生がノートへの書き込みでほめてくれるとうれしいし、アドバイスも参考になる。しっかり宿題を見てくれる」と笑顔を見せる。

 「宿題提出100%」は昨年度まで、主に教科担当や副担任が担当していた。宿題の提出率が上がり、学力向上に結びついた一方、教員の負担が増える面もあった。

 ▽教員の心にゆとり

 「支援員導入後は、放課後に部活で子どもと向き合う時間が増えた」とバスケットボール部顧問で数学教諭の大槻清一さん(37)。「生徒にとっても、授業で教える先生とは別の先生から宿題を見てもらうと、新鮮な気持ちで学習できる」と教育効果にも期待する。支援員の配置が、教員の心に余裕を生んだ。

 前田篤秀校長(56)は「細かいところまでまじめに指導し、一生懸命な子はより一層勉強に励み、いいかげんだった子は、そうできなくなる。宿題の中身の質が上がった」と評価する。

 市教委は本年度、学校支援員配置事業で約1840万円を計上。支援の対象は、学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)、高機能自閉症などで学校生活に手助けが必要な子ども▽いじめや不登校、暴力行為、授業妨害などの課題がある子どもがいる学級▽放課後や長期休業中の学習指導▽担任教員の事務補助―などだ。

 ▽教員経験者ら12人

 市全体では、教員経験者たち12人を採用し、小学校9校、中学校3校が配置している。吉舎中以外では、学習プリントなど教材づくりの手伝いや、生徒指導のアドバイスといった教員の支援にあたる。授業に付き添い、教員の指示が生徒に十分に伝わっていなければ、個別に説明して理解を助ける役割も果たす。

 市教委学校教育課は「教員の負担が軽減され、業務もスムーズになった」と手応えを感じている。未配置の学校からの配置の要望も多い。配置校の児童生徒や保護者たちの声も聞きながら、今後の対応を探る。

(2009.11.23)

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