中国新聞


本で育てる豊かな心
岩国市教委 本年度から読書活動推進員配置


 岩国市教委は本年度から、同市由宇町の由宇小をモデル校に指定し、読み聞かせや、調べ学習を支援する読書活動推進員を常駐させている。児童の図書室の利用件数と本の貸出件数は飛躍的に伸び、教員からは「授業への集中力が増した」と効果を認める声も上がっている。本を通じ、子どもたちの豊かな心と考える力の育成を狙う同校での取り組みを探った。

 「驚くんでない。おらはこの山に住んでいるばばだ」。午前8時すぎ。しんと静まりかえった5年生の教室に、抑揚の効いた声が響く。児童の真剣なまなざしが、特大サイズの絵本に集まる。同校で4月から始めた「ラブック(LOVE BOOK)タイム」での光景だ。

 朗読するのは、推進員の藤本省身(よしみ)さん(68)。週1回、学年に応じた絵本や児童書を選んでは各学級を回る。「花さき山」「100万回生きたねこ」…。取り上げる本は、児童に人気の高い名作ばかり。藤本さんは「読書が苦手な子も、読み聞かせなら喜ぶ。本の魅力をきっかけにしたい」と期待する。

 同校は本年度から2年間、図書室に推進員が常駐。図書の貸し出しのほか、調べ学習や朝の読書時間の指導も担う。今夏は、5年生を対象に原爆関連の本や資料を使った平和学習も実施した。

 「読書習慣が身に付く中で、児童に落ち着きが出てきた」と栗栖嗣夫校長。これまで同校には図書室に常駐する教員や司書はいなかった。児童の利用もまばら。栗栖校長は「古い蔵書が雑然と並び、倉庫のような状態だった」と振り返る。

 藤本さんは着任後、自身の推薦本や人気の本のランキング表を図書室に掲示。親しみやすい「本の教室」に一新すると、4月からの7カ月間で児童の図書貸出件数が1・8倍、図書室の利用件数は2・5倍に急伸した。児童からも「本が見つけやすい」「もっと増やして」といった意見が多く寄せられた。

 市教委は本年度、読書活動推進事業費として約500万円を計上。モデル校のほか、司書資格を持つ推進員4人を小学校7校に掛け持ちで配置した。いずれも2年間を計画しており、栗栖校長は「将来は他校と連携し、蔵書の貸し借りもできれば」と考える。

 市教委学校教育課は「全校に配置したいが、市単独の予算では限界がある」と説明する。市内の小学校を順番にモデル校指定し、推進員がまく「読書の種」を各校で育てていく考え。「時間はかかるが、児童が自然に本に触れられる土壌を教育の場でつくりたい」としている。(和多正憲)

(2009.12.21)

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