中国新聞


子ども向けワクチン3種無料化へ 中国地方


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無料化が始まる右からヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頸がん予防ワクチン

 子宮頸(けい)がんと子どもの細菌性髄膜炎を予防する計3種類の子ども向けのワクチンの無料化が新年から、中国地方の多くの市町村で始まる。国の助成を受けた動きだ。三つのワクチンにはどんな効果があるのか。広島市医師会で公衆衛生を担当する永田忠理事に聞いた。(平井敦子)

◇   ◇

 ―三つのワクチンはそれぞれ、どの病気を予防するのですか。

 インフルエンザb型(Hib=ヒブ)ワクチンと、小児用肺炎球菌ワクチンは、子どもが細菌性髄膜炎にかからないよう予防します。子宮頸がん予防ワクチンは、子宮頸がんを起こすヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぎます。

 ―まず、細菌性髄膜炎がどんな病気なのか教えてください。

 脳と骨髄を覆っている膜に、細菌が入って増殖すると、髄膜炎を引き起こします。

 やっかいなのは、診断が難しいことと重症化するケースが少なくないことです。国内でも1年に800人前後が発症し、50〜200人に聴覚障害などの後遺症が出ます。脳性まひになって寝たきりになる子や、発達が止まってしまう子もいる怖い病気です。

 ―ワクチン接種はいつが効果的ですか。

 細菌性髄膜炎は、免疫が弱い生後2カ月から2歳ぐらいまでの乳幼児がかかりやすく、5歳ぐらいまでリスクが高いです。生後2カ月以降の早期の接種を勧めます。

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 ―ヒブと肺炎球菌のワクチンを同時に接種できますか。

 はい。同時に接種することを勧めます。ほかにもポリオや結核予防のBCGなど、1歳までに接種が必要なワクチンは多く、すべてを別々に接種するのは大変だからです。

 ジフテリア、破傷風、百日ぜきの3種混合ワクチンも1歳までに3回接種が必要です。最近は、ヒブと肺炎球菌、3種混合を同時接種する子が増えてきました。同時接種するときは、両腕の3カ所に場所を変えて行います。

 ―子宮頸がん予防ワクチンについても教えてください。

 子宮頸がんは、子宮の入り口付近にできるがんで、30歳代が発症のピークといわれています。このがんを引き起こすHPVは15種類ほどあります。今回のワクチンは、子宮頸がんの原因として最も多く報告されている2種類(HPV16型とHPV18型)の感染を、10年防ぐといわれています。

 ―接種時期は。

 多くは性交渉によって感染します。ですから、性交渉をする前に接種すべきでしょう。注意してほしいのは、ワクチンを接種しても、子宮がん検診が必要な点です。ワクチンで防げるウイルスの型が限られているためです。20歳になったら、最低2年に1度は検診を受けましょう。

 ―副作用はありますか。

 ヒブと肺炎球菌ワクチンは局所のはれ、かゆみ、発熱など他のワクチンと同じような症状が報告されています。ただ、頻度は他のワクチンに比べて多くありません。子宮頸がん予防ワクチンは、痛みなど局所反応が強いようです。保護者の方にぜひ知ってほしいのは、副作用よりも、病気になるリスクの方がずっと大きいという現実です。予防できる病気は予防してほしいと切に願っています。


ヒブ・小児用肺炎球菌・子宮頸がん予防ワクチンの助成をめぐる動き ヒブと小児用肺炎球菌は0〜4歳が助成対象で、接種開始時期に応じて4〜1回と接種回数が異なる。子宮頸がん予防は中学1年〜高校1年の女子が助成対象で、半年間に3回接種が必要だ。  広島県内では、東広島市で既に無料接種がスタートした。広島市が17日からなど、1月中に17市町で始まる予定。山口、岡山、島根、鳥取県でも多くの市町村で1、2月からの無料化に向けて調整が進んでいるという。  三つのワクチンはこれまで保護者が全額負担する任意接種。厚生労働省が算出している1回当たりの接種費用は、ヒブが8852円▽小児用肺炎球菌が1万1267円▽子宮頸がん予防が1万5939円―と高額。国が接種費用を計上した補正予算が可決し、準備ができた市町村から無料化および一部自己負担を求める形で当面2012年3月までの助成を始めた。

(2011.1.5)

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