中国新聞


中学生犯罪 昨年摘発数 過去10年間で最多
地域や家庭、学校と連携を
校内での事案 大幅に増加 見守る取り組み重要


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 広島県内で逮捕、補導される中学生が増加傾向にある。2010年は1700人を超え、過去10年間で最多となった。今年に入っても、盗んだトラックでの暴走や集団によるけんかなどの事件で計15人が相次いで逮捕されている。専門家や関係者からは、学校が地域、家庭との連携を強め、子どもの行動を地域ぐるみで見守る必要性が指摘されている。

 10日午後、広島市内などの中学2年の男女5人が盗んだトラックで広島市内を暴走し、タクシーなど5台を巻き込む事故を起こした。さらに同市内の中学2、3年の男子計9人が26日までに殴り合いのけんかをしたとして決闘容疑で逮捕、補導された。骨折する重傷を負った生徒もいた。  県警が10年に刑法犯などで摘発(逮捕、補導、任意送致)した中学生は1740人に上った。前年より161人増え、2年連続の増加となった。万引などの窃盗や暴行、傷害事件が多いという。

 ▽「通報やむ得ぬ」

 特に、教師や生徒に対する学校内での暴力行為で逮捕、補導されるケースが大幅に増えている。10年は160人と、前年の1・6倍となった。  県教委指導3課は「残念だが、学校での指導が行き届いていない面がある」と認める。一方で「学校現場での取り組みには限界があり、周囲の生徒への影響を考えると警察への通報もやむを得ない」と強調する。

 しかし、広島市内の中学2年男子(13)は「先生は『警察に言うぞ』と脅すだけで、言い分を聞いてくれない」と、教師とのコミュニケーション不足に不満を漏らす。

 市教委はこのため、臨床心理士や大学教授が子どもの性格や行動パターンを分析し、教員に対し継続的に助言する体制づくりを検討している。

 また、学校と家庭の連携不足を指摘する声もある。市立中学校に通う長男が補導された経験がある父親(49)は「学校は警察へ通報する前に、子どもの様子を積極的に伝えてほしい」と注文する。「学校と歩調を合わせながら、家庭でできる指導があるはずだ」と訴える。

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国泰寺中の正門付近で登校する生徒に声を掛ける少年補導協助員の田中さん(左から2人目)と保護者(広島市中区)

 ▽協助員が指導役

 県警は09年11月、県内の少年補導協助員900人の協力で、定期的に地域の学校を訪問する取り組みを始めた。あいさつなどの声掛けに加え、校内の巡回や清掃などに関わり、生徒の「指導役」を務めてもらっている。

 広島市中区の国泰寺中を訪問している協助員の会社役員田中八重子さん(60)は「顔を見ながら声を掛ければ、あいさつを返す子どもは多い。地域で見守っているメッセージを伝えたい」と話す。

 逮捕、補導される中学生の増加について、広島大大学院の浦光博教授(行動科学)は「社会環境や学校、家庭の指導力の低下などが複雑に絡み合っている」と分析。「学校は、薄れがちになっている地域との絆を取り戻し、地域ぐるみで子どもの変化を見守る取り組みに力を入れるべきだ」と強調する。(山崎雄一)

(2011.1.31)

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