中国新聞


人のやさしさ、伝える場に
児童養護施設出身者向け自立支援ホーム、福山に9月


   

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「憩いの家」の2階で開設の準備をする金高さん

 福山市内海町の園芸家金高良樹さん(59)が9月下旬、児童養護施設を巣立った若者を受け入れる自立支援ホーム「憩いの家」を町内に開く。1998年に四男が高校の同級生たちから暴行を受けた後、自殺した経験から、「人を思いやり、支え合う社会になってほしい」と願って里親活動を続け、ホーム開設にも踏み切った。

 ホームは、自宅隣の木造2階建て民家を寄付してもらった。6人にそれぞれ個室を無償で貸す。希望があれば、野菜やジャーマンアイリスの栽培に雇う。公的補助は受けず、家族で運営する。

 98年、沼南高1年の四男慎(まこと)君=当時(16)=が、同級生たちから金銭要求や暴行を受けた後に自殺した。当時は、同市の複数の中学高校で暴力団と関係が深い暴走族による金銭要求もあった。金高さんは「苦しむ子どもを救わなくてはならない」と国と広島県に再発防止策などを訴えた。

 「人のやさしさを伝えたかった」。金高さんは2000年ごろから約3年間、乳児院などの子ども約10人を短期間預かった。03年には県知事が認可する里親に登録。05〜09年に男児3人を育てた。

 背景には、慎君の事件をきっかけに、「社会は思いやりを失ってきている」との懸念が強くあった。18歳で児童養護施設を巣立った若者が、頼る先もなく苦労する姿に触れ、ホーム開設を決意した。

 金高さんは「行き場を失った子どもを支えたい。衣食住を整えて安心できる場にしたい」と話している。寝具や生活用品の寄付を募っている。金高さん=電話090(8994)2670。(久保友美恵)


児童養護施設を巣立った子どもへの支援 児童養護施設の入所は原則18歳未満。自立が困難な20歳未満の若者を支援する公的制度には「自立援助ホーム」がある。自治体が事業委託し、NPO法人などが運営する。厚生労働省によると、全国で73カ所(2010年10月1日現在)ある。広島県内ではことし1月、広島市西区に第1号が開所した。公的補助を受けない民間施設は珍しい。

(2011.8.19)


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