中国新聞


いじめ把握、217件 校内アンケート徹底へ
2011年度の広島市立小中高


   

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 広島市立の小中高校で2011年度、学校が把握したいじめの件数は217件だったことが19日、市教委のまとめで分かった。前年度から16件減ったものの、専門家は「いじめは把握できないケースが多い」と指摘。大津市の中学2年男子自殺を受け、市教委は校内アンケートの徹底を図り、早期の実態把握と組織的な対応を目指す。

 市教委がこの日の教育委員会議で、速報値として報告した。内訳は、小学校101件(前年度比7件減)▽中学校113件(9件減)▽高校3件(増減なし)。

 学年別で最も多いのは中学1年の53件で、現行の集計を始めた2006年度から6年連続。市教委は、中学進学時の学習環境の変化になじめなかったり、新たな人間関係に悩んだりする「中1ギャップ」が要因とみる。

 いじめの内容(複数回答)は、「冷やかしや悪口など」が142件(65・4%)と最多。「遊ぶふりをしてたたかれたり、蹴られたりする」67件(30・9%)▽「仲間外れや集団無視」56件(25・8%)―と続く。

 市教委はいじめを早期に把握するため年数回、児童・生徒にアンケートするよう全市立学校に求めている。今月に入り、小中学校の各校長会でアンケートの徹底を指示した。

 教育委員会議では、委員から「いじめ対策がマンネリ化していないか」「いじめる側の心の荒れへの対策も必要」などの意見や注文が相次いだ。

 いじめ問題に詳しい広島大大学院の栗原慎二教授(学校教育学)は「学校は子どものSOSを敏感に感じ取る力が問われている」と強調。一方で「いじめ防止には、子ども自身がいじめをやめる気持ちを持つことが大切。子ども同士の人間関係を強める取り組みが必要だ」と指摘する。(胡子洋)

 ▽相談は今月急増 ひろしまチャイルドライン

 NPO法人「ひろしまチャイルドライン子どもステーション」(広島市中区)に子どもから寄せられるいじめの相談が7月に入って、急増している。大津市の中学生の自殺をめぐる報道が繰り返された影響とみられ、4〜6月の3倍のペースとなっている。

 7月1〜16日に県内からかかってきた電話のうち、無言電話などを除き相談員が話をした子どもは29人。うち、男子1人、女子6人の計7人がいじめを受けたり、いじめに加わらされる恐れがあったりすることについて相談した。

 4〜6月は、3カ月で計14人。半月で平均2・3人の計算になる。7月前半は約3倍に上った。

 同法人の上野和子理事長は、報道の過熱で、2006年に全国で相次いだ自殺の連鎖を懸念する。「相談は氷山の一角だ。先生が相談を聞き入れてくれないという内容もあった。子どもが自殺で楽になりたいと考えないようにしたい」と警戒。「周囲の大人は、子どものSOSに一層、注意を払ってほしい」と訴える。

 チャイルドラインは月―土曜日の午後4〜9時に開設している。上野理事長は「相談員に不満をぶつけ、ストレスを吐き出すだけでもいい」と利用を呼び掛けている。全国共通のフリーダイヤル(0120)997777。原則として最寄りの団体につながる。(衣川圭)

(2012.7.20)


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