中国新聞


いじめ防止へ対策強化 中国5県・広島市の教委
相談員増員・ネットも監視


   

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 大津市の中学2年男子生徒の自殺などでいじめへの対応があらためて重要視されるようになる中、中国地方5県と広島市の教育委員会は2013年度、いじめ防止に向けた対策を強化する。非常勤職員やスクールカウンセラーの増員、インターネット上の悪質な書き込みの監視などさまざまな方法でいじめを食い止める。

 広島市教委は4月から、非常勤職員が週6時間程度、生徒指導担当の教諭の授業を代わりに受け持つ制度を始める。放課後以外にも教諭がいじめに対応する時間を確保するためで、小学校30校で実施する。「授業を気にせずに動ける。いじめの早期発見や迅速な対応につなげたい」と説明する。

 5県は小学校を中心に、子どもたちの悩みの相談を受ける臨床心理士たちスクールカウンセラーの派遣を増やす。広島県は新年度、小学校は15校増の40校、高校は5校増の26校に配置。中学校を含む全体では232校になる。山口県の小学校は、30校増えて100校の配置となる。

 文部科学省が、小中高と特別支援学校を対象に実施した緊急調査では、12年4月からの4、5カ月間で確認した千人当たりのいじめの件数は、広島2・4件▽山口3・0件▽岡山5・7件▽島根3・4件▽鳥取3・0件。山口を除く4県で、11年度の年間件数よりも増えた。

 一方で、各県とも全国平均の10・4件は下回る。「まだ見つけ切れていないという危機意識を高めたい」(山口県教委)との認識は共通する。

 広島県では11年度に公立学校がアンケートでいじめを把握した件数が14件(2・8%)で、全国平均(28・5%)と懸け離れている。このため県教委は12年11月、いじめアンケートのひな型を作り、市町教委などに送った。

 弁護士や元警察官たち外部の人材を活用する動きも広がる。大津市の中学2年男子生徒の自殺などを受けて、文部科学省が、学校任せだったいじめの対応を転換したためだ。

 岡山県は12年11月、弁護士や臨床心理士、元教員たちでつくる専門チームを設けた。学校だけで対応困難なケースで教諭や市町村教委に助言、学校や家庭にも出向く。鳥取県は同月、中立の立場で解決に当たるため、教育委員会ではなく人権局にいじめ問題検証委員会を置いた。

 山口県は、問題を抱える子どもの家庭を、弁護士や医師などの専門家が支援する制度を新設する。広島県は、暴力行為の発生が多い小中高計32校に、校長経験者や県教委職員でつくるプロジェクトチームを1週間から1カ月間派遣し、いじめを含む課題について、学校全体の対応改善を図る。

 文科省の緊急調査では、いじめ全体の中で「パソコンや携帯電話などで、誹謗(ひぼう)中傷や嫌なことをされる」は、高校で16・3%、中学校で5・6%だった。インターネット上での悪口や嫌がらせが増える中、広島市と島根県は「ネットパトロール」を始め、悪質な書き込みを見つけた場合は管理者に削除させる。

 広島市は市教委職員3人が、通常業務の合間に1日数時間「学校裏サイト」と呼ばれる学校の非公式掲示板などを点検する。島根県は業者に委託。岡山県は09年10月からネット上の書き込みを点検している。

 「いじめをしない心を育てる教育にも力を入れる」と強調するのは広島県教委。13年度、小中学校の道徳の授業や、高校の特別活動の指導案をつくる。(衣川圭、石井雄一)

(2013.3.18)


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