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「いいお産 考」

特集2
対談「産む立場・支える立場」

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 特集 産む人や家族にとって「いいお産」とは− 2007.1.1

 産む人や家族にとって「いいお産」とは―。出産をめぐる環境が、産科医師の不足などから厳しさを増す一方、よりよいお産を目指す試みも広がっている。自宅で家族と一緒の出産や、生まれたばかりの赤ちゃんとのスキンシップを促す「カンガルーケア」、水中での出産、無痛分娩(ぶんべん)…。さまざまな形があるお産について、中国地方の取り組みを追った。同時に、「赤ちゃんにやさしい病院」として国際的評価を受ける梅田病院(光市)院長の梅田馨さん(65)と、長男を自宅で産んだ広島市の育児サークル「fam」代表の五十部紗代さん(23)に、対談で「いいお産」について考えてもらった。
担当:伊東雅之、平井敦子、森田裕美
■ 和室で家族で 出産楽し ■
赤ちゃん増 明るい兆候

 進む少子化―。二〇〇五年の出生数は全国で百六万三千人と、第二次ベビーブーム(一九七〇年代前半)のほぼ半数に落ち込んだ。一人の女性が生涯に産む子どもの数の推計値を示す「合計特殊出生率」も、過去最低の一・二六。しかし好転の可能性も出てきている。

 〇六年の出生数は、月別速報値(在日外国人、在外日本人を含む)で、二月から七カ月連続で前年同月を上回り、九月もほぼ同数を記録した。中国地方でも、傾向は全国と同じ。産声を上げる赤ちゃんの数は毎月五、六千人だが、二〜八月は前年同月を超えた。少子化に歯止めをかけるための対策に乗り出した政府は、「明るい兆し」との見方を〇六年版少子化社会白書で示している。

子どもたちと一緒 ● ○ ● ○

 「家族みんなで赤ちゃんを囲み、すごく幸せでした」。広島市東区の池田彩香さん(25)が、第三子の一雫(いちな)ちゃんを産んだのは自宅のリビング。助産師の介助で、夫と娘二人と一緒に新しい命を迎えた。中国五県で二〇〇五年、自宅出産で生まれた赤ちゃんは九十人。出産全体に占める割合は0・14%にすぎない。

カンガルーケア ○ ● ○ ●

 生まれたばかりの赤ちゃんを胸に抱く出雲市の土江歩さん(20)。「赤ちゃんはあったかかった」。島根県斐川町の吉野産婦人科医院では、生まれてから約2時間、母親と新生児が肌と肌を触れ合わせ、母乳を飲ませたりして過ごす「カンガルーケア」を実践している。母子の愛着をはぐくみ、母乳育児を促進するのが狙いだ。

Photo「フリースタイル」

フリースタイル ● ○ ● ○

 産む場所は、和室―。広島市西区の香月産婦人科では、希望に応じて和室での分娩ができる。あおむけの姿勢はもちろん、かがんだり、夫にもたれ掛かったり、座ったり、天井から垂れ下がる綱を引っ張ったり…。自由なスタイルで産む。同産婦人科は「母親も赤ちゃんも拘束されない方が楽」と説明している。

無痛分娩 ○ ● ○ ●

 背中から硬膜外麻酔をかけて、お産する。分娩の痛みは和らぐが、意識はあり、息んで産める。日本ではなじみが薄いが、米国やフランスでは妊婦の約7割が、この方法で出産しているとされる。宇部市の磯部レディースクリニックでは、自然分娩を希望する人の8割が、分娩の途中から無痛分娩に切り替えている。同クリニックは「恐怖感が強い人や心身に病気がある人に特に適している」と説明している。

Photo「水中出産」

水中出産 ● ○ ● ○

 体温ぐらいの温水が入った、大きな風呂のようなプール。妊婦は中に入ってわが子を産み、自分で取り上げる。一九九六年から水中出産に取り組んでいる岡山市の三宅医院には年に一人程度、岡山県内外から希望がある。英国製の縦約二メートル、横一・五メートルの楕円(だえん)形のプールを、分娩室に組み立てて対応する。同医院は「温水の中で筋肉の緊張を和らげ、分娩を促す」と話す。