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「いいお産 考」

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 第3部 ママになるには

反響
− 産後うつ 苦しみ共感 −

 五月二十三日から三十日まで掲載した連載「いいお産考」の第三部「ママになるには」に対し、十八通のメールやファクスが寄せられた。うち九通は、一回目で取り上げた、十人に一人か二人の割合で発症するといわれる「産後うつ」にかかわる体験談だった。声の一部を紹介する。

「孤独」「泣かれると動悸」


  心の支援 大切さを確認

 出産後九年になるという山口県内のパート女性(40)は、「読んで涙が出ました。まさに、この記事通りの経験でした」とつづった。深刻な体験談も、したためていた。

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「頑張りすぎてるんじゃない? 体の力を抜いて。そんなに力が入っていたら育児は大変よ」。助産師(右)のアドバイスを受け、マタニティーヨガに取り組む妊婦たち

 夫や義父母は育児に非協力的。「ひたすら精神的孤独を味わいました。病院にも行きましたが、『気持ちの問題』『神経質だから』と軽く流されました。家族には分からないように振る舞いながら、ただ死に方だけを考える毎日。私が死んだらこの子を守ってやる人はいない、とだけを胸に現在に至っています」

 産後うつについて、広島市東区の主婦(38)は「真っ暗なトンネルで出口を探し、もがいているような、息がつまるような苦しみ」、安芸区の主婦(33)は「退院後は真っ暗の中で、針の穴の光が週ごとにだんだん大きくなり、家族や生活が見えてきた」と表現する。

 生後二カ月の娘を育てているという別の女性も、産後うつの真っただ中にいた。「苦しんで、悩んで、思い詰める毎日でした。楽になりたい。この子さえいなければ。この世から消えたい。それ一心で…。昼間子どもと一対一になるのが恐怖で、泣かれると動悸(どうき)もしてました」と告白する。

 一方、「そんな私を救ってくれたのは、実母と理解ある夫でした。手遅れになる前に、手を差し伸べ、抱きしめてくれました。自分の回復に手応えを感じています」と家族の支援に感謝する。

 今年二月に出産し、ストレスに悩んだ広島市佐伯区の主婦(30)は、「母乳外来」が助けになったという。「毎晩泣きましたが、救いは、出産した所での母乳外来です。マッサージしてもらいながら、聞いてもらうことができました。自信を持たせてくれたり、アドバイスしてくださったり。そのおかげで、楽しく育児もできている。ホント聞いてくれる人やそういった場所は必要」と訴える。

 三回目で紹介した超低出生体重児の母子への支援策に対しては、広島市内の三十歳代の主婦から中国地方の大学病院の対応への不満が寄せられた。「早産に備え、入院している時、長期入院が邪魔らしく、『何でまだいるの?』『いつまでいるんだ』と毎週のように言われ、つらくてたまらなかった。周りの友人が泣いているほどだった」と、精神的なサポートにまったく欠ける現状を突き付けた。

 支える側からも意見が届いた。七歳と五歳の娘がいる看護師の女性(32)は、医療現場での理想と現実のギャップを指摘。「医療は進歩しても、携わる人員の減少などから、患者の不安は大きくなっている。スタッフが少なく、一人一人の負担が大きくなると、『ケアの余裕』が奪われる。精いっぱいのケアのため、社会的改善を強く望みます」と切実だ。

 中国地方のある自治体の男性職員は「出産前からの切れ目のない、ちょっとした支援、一言が、児童虐待を確実に未然防止できる。今後、産科施設の集約化が進むと思われるが、集約化した病院こそが、産前産後の母親への精神的なサポートを充実させれば、少しは住民の理解が得られるのではないか。そんな政策が打ち出せたら」との思いを打ち明けた。


2007.6.9