人が山との付き合いをやめ、人とイノシシとの緩衝地帯は狭まる
ばかり。農作物を守るための予防線は、次第に里へと下り、今では
一人ひとりが自分の田畑だけしか囲えなくなった。
コミュニティー再生の糸口に、シシ垣跡を掘り起こす取り組みが
昨年、関西で始まった。言い出したのは、奈良大文学部の高橋春成
教授(50)=地理学。広島大で大学院生、助手と過ごし、イノシシな
どの獣害が中国山地の過疎化に与えた影響について研究した。
「シシ垣は、郷土の文化財としてだけでなく、野生動物と共存す
るライフスタイルや地域開発を考えるうえで大事なヒントになるは
ず」。自らも昨年秋から、住んでいる滋賀県で住民たちとシシ垣跡
を調べ歩いている。ホームページ(HP)も開設し、全国に眠る遺
構の掘り起こしを呼びかけている。
高橋教授の「シシ垣ネットワーク」のHPアドレスは、http://homepage3.nifty.com/takahasi_zemi/sisigaki/sisimein.htm
右の写真は、上左=シシ垣造りのいきさつを書いた江戸時代の覚書。住民が
大事に保存している(2002年8月、広島県安浦町) 上右=さくを張っていない民家の脇の畑に入り、サツマイモを
くわえて逃げるイノシシ(2002年10月、広島市安佐北区) 下=島根県畜産試験場おすすめの電気さくとトタン板併用方
式の講習。集まった農家は真剣そのもの(2002年8月、島根県邑智
町)
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