行方不明者9人の捜索難航/広島市

'99/7/1 夕刊

 集中豪雨の惨禍から三日目を迎えた一日、大被害を受けた広島市 佐伯区と安佐北区の現場では、行方不明者九人の捜索が続いている。一 秒でも早く…」。今夜から再び雨の予報が出ているため、現場では 作業のピッチを上げている。

 二十棟ほどの家屋が土石流に押し流された佐伯区屋代三丁目で は、会社員後藤孝明さん(27)が依然、行方不明。午前七時半から、 消防署員ら八十六人が倒れた家屋を解体しながら後藤さんを捜し た。

 懸命な作業を見守る人々の中に、母親の時代さん(52)の姿があっ た。「三人兄弟の長男。一緒にいた弟の話だと、犬を連れ出そうと して、逃げ遅れたようです」。現場を見つめながら時折、込み上げ る涙をタオルでぬぐう。「早く出してやりたい…」。時代さんの声 が、震えた。

 佐伯区では、ほかにも五日市町上小深川、平岡愛子さん(76)、同 町下小深川、丹田千里さん(86)、同町上河内、鈴木美代子さん(29) の行方が分からず地元の消防団員や自衛隊員ら合わせて約二百人が 捜索に当たっている。

 安佐北区亀山九丁目の現場では、行方不明になっている農 業河久保敏雄さん(61)の捜索が徹夜で続けられたが依然、見つかっ ていない。

 捜索は四十時間以上、休みなしで続行。発生から三日目を迎えた 一日朝も、百人を超える体制で作業に当たっている。しかし、大量 の流木が捜索の支障になっており、ト ラックで運び出し、三度目の土砂を掘り起こすことにしている。

 土砂が流出した現場の裏山は一九九七年七月の大雨で母屋近くの 高さ十メートルの斜面に亀裂が入った。直径二十~三十センチの落石が あったため、河久保さんが雨よけのシートを掛けていた。

 市安佐北区役所は、今回崩落した場所近くから幅二十メートルに わたり、斜面全体に芝生を植える補強工事を決め、秋にも実施する 予定だった。河久保さんは「安心できる」と近所の人に話していた という。

【写真説明】流木や壊れた家屋をかきわけながら、懸命な捜索が続く災害現場(1日午前7時50分、広島市佐伯区屋代3丁目)


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