捜索再開 雨小康に被災者ら一安心

'99/7/3 夕刊

 「雨音が気になって寝付けなかった」―。三市八町で勧告が出さ れ、四千人以上が地域の学校や集会所に避難した広島県では、未明 まで降り続いた雨が三日朝、小康状態となった。不安な夜を過ごし た住民の多くはホッとした様子。警察や消防による行方不明者の捜 索も再開された。

 広島市佐伯区三宅二丁目の広島工業大の体育館では、柔道用の畳 をフロアに敷き、四百人余りの住民が毛布にくるまって一夜を明か した。二十九日に土砂崩れが起きた屋代地区の住民が多く、午前六 時前から起き出し、自宅の安全確認に向かった。

 家族四人で避難した佐伯区屋代三丁目の不動産業開田憲房さん (50)は「ザーッという雨音が屋根に響くたびに目が覚めてしまっ て」と眠い目をこする。この四日間、自宅周辺に土のうを積む作業 に追われ、疲れ切ったという。

 高校二年橋本麻美さん(17)は自宅一階に土砂が押し寄せ、被災以 来、高校に行っていない。風呂やトイレも使えなかったため、「避 難所は大学のシャワーが使えてよかった」と安心していた。

 広島市佐伯区内の屋代、上河内地区では、行方が依然わからない 二人の捜索が朝から再開された。

 屋代地区では、午前八時ごろから、消防署員や団員、警察官ら約 百二十人が、不明になっている会社員後藤孝明さん(27)の発見に努 めた。捜索場所を、前日までの位置から土石流の百メートルほど下 流に当たる畑に移し、たい積した土砂の内部を棒で探ったり、スコ ップで土砂をかき出したりしながら、懸命の作業を続けた。

 現場付近の民家には、避難場所の広島工大体育館で一夜を過ご し、戻ってきた住民らの姿も見え、庭や道路の片付けに追われなが ら捜索を見守っていた。近くの会社員田上稔朗さん(57)は「一刻も 早く見付かってほしい。災害の惨状を記憶に残しておかなければ」 とビデオカメラで撮影していた。

 一方、周辺に急傾斜地が多い呉市八幡町の和庄小学校体育館に は、二日午後四時過ぎから住民が集まり始め、七十三人が最終的に 避難した。市は二人の職員を配置し、毛布や弁当、飲料水などを支 給。非常電話を開設し住民らの便宜を図った。

 一晩中続いた雷雨で寝つけない人が多く、夜明けとともに自宅の 様子を見に帰る住民も目立った。家族七人で避難した清水三丁目の 主婦浜中昭子さん(57)は「昭和四十二年の豪雨災害で自宅が被害を 受けた記憶がよみがえり、一睡もできなかった。家の状態が気掛か りです」と気をもんでいた。

【写真説明】八幡川で行方不明者を捜索する消防署員たち(3日午前9時、広島市佐伯区上河内)(右)土砂で汚れた服を仮設の水道で洗う住民たち(3日午前8時半、広島市佐伯区屋代3丁目)


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