県道呉平谷線山岳区間の新道概略決まる

'99/7/14 朝刊

 地形上の問題から手つかずとなっていた県道呉平谷線二河峡山岳 区間の新道の概略設計が、構想から約十年を経てようやく示され た。焦点となっていた新道の建設には、長大トンネルを掘削する案 を採用。広島県は実施設計に向け、本年度から地質調査に入る予定 にしているが、先月末の豪雨災害が影響し、着手のめどは立ってい ない。

 新道の建設区間は、上二河町から焼山此原町までの二・二キロ。 現道の東側山中に一キロを超すトンネルを掘り、山腹を削って造る 道路や橋でつなぐ。

 県は、上下四車線の新道を計画し、まず焼山方面行き路線となる 二車線分を建設。上下各一車線の現道を市中心部行きの専用路線に 割り当て、暫定的に四車線を確保する計画だ。

 現道は、急カーブが続く坂道で、冬場は路面凍結することもあ る。新道建設では、長大トンネルと、短いトンネルを掘りつなぎな がらルートを蛇行させる案などが浮上。周囲の景観が保て、直線道 が造れる長大トンネル案が有力視されてきたが、区間全体の標高差 が百二十メートルあるため、トンネル内のこう配率が五%台に達す ることが判明。五%のこう配率で一キロの距離を持つトンネルは全 国的にも例がなく、安全性の面から慎重論が持ち上がっていた。

 しかし、蛇行道の建設だと現道に支障を与える工事が避けられな いうえ、工費も割高なこともあり長大トンネル案に決まった。

 県はこう配、地質などの問題を踏まえ、今後、設置場所や道路構 造の詳細な検討に入る。概略設計では新道は現道より七百メートル ほど距離が短縮される見通しだが、こう配対策としてルート全体に 弧を描かせ、距離を稼ぐことで対処する案も有力視されている。

 県は本年度、初めてのボーリングなどの調査費として四千万円を 計上。実施設計に先駆け、秋口から本格的な地質調査を予定してい たが、先月二十九日の豪雨災害で同線が全面通行止めになったた め、開始が大きくずれ込む可能性も出ている。県呉土木建築事務所 の太尾下宏事業調整監は「災害に加え、財政状況も厳しさを増して おり実施設計の時期は見当がつかない」と話している。

 同線は、呉市中心部と北部のベッドタウン焼山地区を結び、 一日平均の車両通行量が一万七千台に上る大動脈。二〇一〇年には三万千台に増加することが予想され、県は道路の拡幅 やトンネル建設で全線四車線化に既に着手している。

【写真説明】新道の概略設計が示された県道呉平谷線二河峡山岳区間。豪雨災害の復旧作業が続く


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