山林宅造地近くで豪雨禍/広島市佐伯区

'99/7/15 朝刊

 ■広島工業大学と本社 衛星合成画像で検証

 六月二十九日の集中豪雨を受け、広島工業大学(広島市佐伯区三 宅二丁目)と中国新聞社は十四日、同大が試験的に作った広島市佐 伯区とその周辺の推定危険個所と、今回の主な土砂崩れ現場などの 合成画像を作製した。画像は、危険度の高い部分でがけ崩れや土石 流が発生し、危険個所に向かってさらに開発が迫っている様子を鮮 明に映し出している。研究グループは危険が身近に潜んでいること を認識し、危機意識を持とうと呼びかけている。

 ▽危険個所 開発進む

 画像は、環境学部の菅雄三教授(遠隔探査学)のグループが作っ た。地球観測衛星から得たデータを防災に活用する研究に取り組ん でいる。今月初旬、まず「斜面崩壊危険度推定マップ」を作製。続 いて衛星の観測データから土地被ふくの変化を解析し、危険度推定 マップに合成した。

 過去十二年間で森林から造成地、宅地になるなど、新たな開発が 始まった場所は黄色、さら地から宅地になるなど、宅地造成が進ん だ場所は水色で特定されている。いずれも、茶色で色分けされた危 険度の高い場所の近くで開発が進んでいることが分かる。

 衛星が感知した斜面崩壊の発生場所(ピンク色)に加え、中国新 聞社が調べた斜面崩壊現場を丸印で地図に置いた。印は、人が亡く なったり家屋全壊などの被害があった八カ所。(1)(2)は、造 成や開発が進んだ地域のすぐ近くで発生した。(1)は元あった団 地を拡大造成した一帯のすぐ近くの山で土石流が起きた。(2)は 八年前に本格的に入居が始まった新しい団地で、のり面がところど ころ崩れた。(3)(4)は谷沿いの古い集落で発生したことがう かがえる。

 宇宙開発事業団の熱帯降雨観測衛星(TRMM衛星)による「降 雨強度解析画像」は、二十九日午後四時前の時間雨量が一五ミリを超 えた地域を赤色で表している。今回の集中豪雨で土砂災害が発生し た一帯と雨が激しく降った地域はほぼ一致。気象条件が土砂災害の 誘因になったことが読み取れる。

●同様の災害発生懸念

 菅雄三教授の話 開発が危険な場所へと進んでいる。そこへ集中 豪雨が重なり、災害は起こるべくして起きた。斜面崩壊の危険度が 高い地域が豪雨に襲われると、同じような災害が発生する恐れがあ る。特に、既存の造成地に追加する形で、隣接した山肌を開発する 場合は、砂防ダムなどのさらなる防災対策が必要だ。


 【画像作成の方法】 合成画像は、広島工業大が作製した「斜面崩壊危険度推定マッ プ」に、中国新聞社が調べた主な斜面崩壊発生地(8カ所)の情報 を加えて完成させた。危険度推定マップは、フランスの地球観測衛 星「スポット」の観測データを基に、土地を覆う物質の違いによる 水の流れやすさを分析。「最も危険」から3段階を茶色で表した。 さらにこの画像に87年1月のデータを加え、12年間の土地利用の変 化を示した。黄色はその間に開発された団地や埋め立て地、水色は 造成地に建物が建ったり、道路が広がったりした場所を指す。


【写真説明】広島市佐伯区とその周辺の斜面崩壊危険度推定画像と土地被ふく変化画像の合成マップ。○は土砂災害が発生した場所。ピンクは衛星が感知した土砂災害発生地(広島工業大学/宇宙開発事業団/©CNES1999SPOT(R))


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