土砂災害調査団が地域防災見直し提言/広島県

'99/7/17 朝刊

 土木学会の広島県土砂災害緊急調査団(団長・福岡捷二広島大工 学部教授)の福岡団長ら四人が十六日、県庁で記者会見し、調査結 果速報を公表した。原因を「短時間での急激な雨量と、まさ土とい う崩壊しやすい土壌条件が重なった」と分析。自治体の地域防災計 画の見直しや、住民の自主避難システムの確立などを提言した。

 調査団は広島大、立命館大、京都大などの土木関係の専門家九人 で結成。二~十一日の五日間、被害の大きかった広島市安佐北区、 佐伯区、呉市内など十二カ所で被害状況を調べた。

 福岡団長らは「被災地は花こう岩が風化したまさ土が覆い、大雨 が降ると斜面崩壊、土石流が起きやすい」と指摘。「佐伯区から安 佐北区、呉市から東広島方面にかけては、三時間に一一〇~一二〇 ミリ以上と前例のないような降雨があった」と短時間での集中豪雨を 原因に挙げた。

 今回の災害では、自治体の避難勧告の遅れが指摘されている。そ の点については「災害は雨が強くなってから三時間以内に発生して おり、危険を察知して避難勧告を出したとしても間に合わない状況 にあった」との見方を示した。

 今後の対応については、今の地域防災計画の考え方では、突発的 に発生する土砂災害に素早く対応できない点を指摘。「短時間豪雨 に対応できる新たな危機管理システムを検討する必要がある」と防 災計画の見直しを提言した。

 さらに、土石流や斜面崩壊の危険個所を示すだけでなく、災害発 生時の土砂や土石流の到達範囲を明らかにしたハザードマップの作 成も自治体に求めている。

 住民にも①自宅周囲の地形や地質、災害発生限界雨量などの把握 と雨量計の設置②自主避難場所の確保と行政と一体となった情報伝 達システムの確立③避難訓練などによる防災意識の高揚―などを提 言した。

【写真説明】広島県の集中豪雨災害に関する調査結果と提言を発表する土木学会の福岡団長(右から2人目)


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