▽米朝直接対話 実現促す
―北朝鮮の核実験実施公表から国連安全保障理事会制裁決議までの動きをどう受け止めますか。
核実験をやった北朝鮮は本当に許せない。何とか思いとどまるのではないかと思っていた。落胆というよりもむしろ、世の中は一体どうなるんだという不安に襲われた。しかし、国内政治も国際社会も、制裁、圧力で北朝鮮を屈服させ、核を放棄させるという流れになっているのはまずい。
強硬政策に一因
―問題の根本は、どこにあるのでしょう。
実験に反対するだけでなく、原因が米国の強硬路線一本やりの北朝鮮政策だというのを認識すべきだ。フランスの新聞も今日の事態を招いたのは米国だと指摘している。心ある人は、北朝鮮と同時に米国が問題の原因だと知っている。
―ヒロシマは、その役割をかつてないほど問われています。
核ミサイル発射、原子力発電所破壊という国民保護計画が想定する二つの事態が現実となる可能性も今や否定できない。広島、長崎を経験した者は決してこれを許してはいけない。それがノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ウオーの根源的意味だ。
メッセージ発信
―具体的に、どう行動していきますか。
実験をやめさせるだけではなく、再び核被害が起きないようにするのがヒロシマからの発信の目的だ。結論としては米国に、北朝鮮が求める直接対話に応じさせるしかない。核実験反対集会で「米国よ対話に応じろ」とメッセージを発する。広島や長崎のメディアが一致団結してそういう論陣を張るのも国内外に向けてインパクトがある。
―米朝による協議は解決につながりますか。
悪循環を断つため、まずは話し合いで問題解決をする合意がいる。具体的な話し合いは六カ国協議でいい。なぜ米国が応じないのか疑問だ。北朝鮮は何とかして国家として生き延びたいと思っている。特にエネルギーの安定供給を求めている。
―被爆国日本の外交に求められるものは。
米国と仲良くしていればすべてうまくいくという無責任な対応では、世界第二の経済大国の外交としてはお寒いかぎり。日本はその気になれば、米国に「殿、ご乱心を」と言える立場にある。日本が言えば説得力はすさまじい。戦争を回避したい中韓とスクラムを組み、北朝鮮との直接対話を求めれば米国も応じざるを得ない。米国も直言してくれる存在があるのは幸福だと気付くはずだ。核戦争につながりうる根本的な原因を取り除けば、北朝鮮を非核化に導ける。(岡田浩平)=おわり
あさい・もとふみ 愛知県出身。東京大法学部を中退し、1963年に外務省に入る。中国課長などを歴任し外交官歴は25年。文部省に出向し東京大教授も務めた。退官後は日本大、明治学院大教授を経て2005年4月から現職。専門は日本政治外交論。
【写真説明】「戦争はありえないという認識が出発点であるべき。それを強力に言えるのはヒロシマ、ナガサキだ」という浅井所長
    
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