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認定基準の判断が焦点 原爆症訴訟4日判決 '06/8/3

 被爆者援護法に基づく原爆症認定の申請を却下したのは不当として、広島、山口両県などの被爆者四十一人が、国に却下処分の取り消しと一人当たり三百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が四日、広島地裁で言い渡される。五月の大阪地裁では現行の認定基準の「機械的な運用」を批判、原告九人全員が勝訴した。広島地裁が認定の在り方をどう判断するかが焦点となる。

 全国で係争中の原爆症認定集団訴訟の中で最多の原告を抱える被爆地での司法判断。大阪地裁判決を踏襲すれば、相当数の原告が認定される可能性もあり、他の訴訟や援護行政に影響を与えそうだ。

 訴えによると、六十二―九十四歳の原告のうち三十九人は一九四五年八月六日、爆心地から〇・五―四・一キロで被爆、残り二人は十九日までに救護などで爆心地近くに入り被爆した。その後、がんや白内障を患い、認定を申請したがいずれも国に却下された。原告は当初四十五人いたが、既に十人が死亡。現在は遺族が継承した分も含め四十一人が争っている。

 現行の認定基準は、爆心地からの距離で被曝(ひばく)線量を推定する計算式「DS86」と、計算式で得た線量に性別や年齢も考慮して病気の発生確率を出す「原因確率」が柱。これらによると、爆心地から二キロ以遠の遠距離被爆者や入市被爆者は、影響を軽くみられる傾向があり、ほとんど原爆症の認定はされていない。

 これに対し大阪地裁判決は、放射線による人体への影響は科学的に未解明な点があると指摘。認定基準を「一つの考慮要素にすぎない」と位置付け、被爆状況や被爆後の行動などを総合的に考慮すべきだと結論付けた。

 集団訴訟は、大阪を含め全国の十五地裁で提訴され、原告は百八十三人(七月末現在、日本被団協まとめ)。七月には大阪、広島に続いて東京地裁でも結審している。(松本恭治)


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