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61年目ドームから遺品 旧産業奨励館の隣に自宅 田辺さん '06/8/4

 ▽水がめや瓦の破片 「爆心地」取材で発見

 爆心地復元映像制作委員会の主管として新作「爆心地〜ヒロシマの記録〜」を完成させた田辺雅章さん(68)=広島市西区=が制作中、原爆投下まで自宅が隣接していた原爆ドーム(中区、旧広島県産業奨励館)の敷地内で、家にあった水がめなどの破片を見つけた。六十一年目の遺品発見に「宿命のように感じた」と、こだわり続けて来た爆心地への複雑な思いを重ね合わせた。(宮崎智三)

 遺品は五月、許可を得てドームの柵の中に入って取材中に見つけた。旧奨励館の東南側に、火鉢や水がめ、手洗い場のタイル、焼けただれた屋根瓦の破片が、がれきの中に散乱しているのに偶然、気が付いた。ちょうど家の土蔵が並んでいた辺りだった。

 水がめは、土蔵の近くに雨受けと防火用水を貯蔵するため、置かれてあった。その中で金魚を飼っていたので覚えていた。当時、珍しかったタイルは水色と白の二色で、中庭の南西部にあった手洗い場の一部だという。被爆前の家の写真とも照合し、「自宅で使っていた遺品」との確信を得た。

 田辺さんの自宅は奨励館の東隣にあり、中庭を通して奨励館が見えた。原爆投下時は山口県に疎開していたため、直爆は免れたが、両親と弟を失った。自身も二日後に入市被爆した。

 「柵で囲われる前から何度も来ているのに気付かなかった」と驚きを隠さない田辺さん。街はもちろん、そこに暮らしていた人びとも根こそぎ奪い去った原爆の恐ろしさをあらためて感じた。

 新作は、十九日に上映会がある。午後一時から安佐南区大塚東の市立大講堂で開く。上映に先立ち、田辺さんや被爆者による対談もある。無料。ナック映像センターTel082(292)9401。

【写真説明】原爆ドームわきのがれきの中から偶然発見した、自宅で使っていた水がめの破片(「爆心地〜ヒロシマの記録〜」から)


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