非核地帯会議 軍縮の決意をNPTへ
【社説】 宣言には、核保有国の軍縮と核廃絶への努力を最大限に求める強い意思が込められている。メキシコ市で開かれていた「非核地帯会議」はきのう、米国など核保有五カ国に対し、二〇〇〇年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で合意された「核兵器廃絶への明確な約束」の履行を迫る宣言を採択し、閉幕した。
核大国の思惑から核軍縮が進展しない現状の中で、宣言の決意をぜひ、五月二日からニューヨークの国連本部で始まる再検討会議での前向きな成果につなげたい。
現在ある非核地帯は中南米、南太平洋、アフリカ、東南アジアと南極の五つの地域。ほかに中央アジア五カ国が最終合意している。国際条約などで核兵器の開発や保有などが禁止された地域である。今回の会議は、南極を除く四つの非核地帯の各国代表が初めて一堂に集まって開いた。意義は大きい。核保有国に廃絶の実効性を求めるのが狙いだ。
採択された宣言はまず、「明確な約束」の合意にもかかわらず進んでいない核軍縮の現実や、核兵器の役割を広げようとする動きへの懸念を強調。その上で「非核保有国に対して核兵器の使用や威嚇を行わない保障」を求めた。会議の中核である途上国が米国に抱いている強い不満を反映した内容といえる。
ただ、それも米国がNPT体制に背を向ける姿勢を続けていることからすれば当然である。前回の再検討会議は、米国など核保有国を含め「全会一致」で核廃絶への「明確な約束」を最終文書に盛り込んだ。難渋を極めた折衝の末だったが、被爆地はじめ非核地帯会議の各国などは「核のない世界」の実現に向けた歴史的な成果として評価した。
しかし、その後の米国の動きはテロ対策や北朝鮮・イラン政策もあって小型核兵器の研究開発に向かい、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准も拒否し続ける。「必要時にすぐ使える核兵器」開発の意図があり、核使用の敷居が低くなっているだけに、各国の不信と警戒感が高まっているのだ。
確かに、北朝鮮のNPT脱退や核兵器保有の明言、核の闇市場の問題などが核軍縮・不拡散体制を崩しかねない危機感があり、それが米国の強硬姿勢につながっているのも事実だ。とはいえ、NPT体制を実効あるものにするには、軍縮の強化と不拡散推進の両面からのアプローチがなければならない。その核軍縮には、保有大国の自制は欠かせない。
もう一点、この会議で疑問に思えることがある。オブザーバー参加した日本の被爆者団体によると、政府の代表演説で「明確な約束」など核軍縮措置について態度表明をしなかったという。被爆国が核廃絶の意思を示さなくては各国の信頼を失い、非核連携にも支障が出る。心配だ。
間もなく始まるNPT再検討会議は、直前でありながら議題が決まらない状態だ。だが前回も、渋る核保有国を最後に合意させたのはメキシコなど新アジェンダ連合の積極的な努力だった。核兵器の存在は人類生存への脅威だ。今回も非核地帯会議などの強い結束が核軍縮・廃絶のさらなる流れをつくってほしい。被爆国の責務もまた大きい。
(2005.4.30)