被爆国の熱意がカギ
米側、譲歩の余地
核拡散防止条約(NPT)再検討会議の初日にあった日米両政府代表の演説は、核軍縮に否定的な核超大国の姿勢をあらためて示し、米国の譲歩を引き出そうとする被爆国の意気込みも感じさせた。議題が決まらないまま幕を開けた今回の会議にとって、両国の動きが論議の行く末の鍵を握りそうだ。(宮崎智三)
「原爆展のパネルを見て、あらためて核の悲劇に胸を打たれた」。わずか十分程度とはいえ、町村信孝外相は自らの意向で日本被団協主催の原爆展会場を見学し、直後の演説にそのくだりを盛り込んだ。「この会議をNPTの権威と信頼を強化する機会とすべきだ」
非政府組織(NGO)や被爆者は「米国に遠慮した表現が目立つ」と指摘する。ただ、米国が拒否する包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効も含め、「二十一世紀のための二十一の措置」を提案した意気込みは、一定の評価をして良いだろう。
外相の会議出席は一九九五年の河野洋平氏に次いで十年ぶり二回目。外務省は「演説を評価した五カ国の代表が町村外相の席にあいさつに来た」と手応えをアピールする。
そうした被爆国の最大のハードルは、同盟国でもある米国。会議で演説したラドメーカー国務次官補は、核保有国に核軍縮を義務づけているNPT第六条を「順守している」と強調。しかし、アナン国連事務総長も「重要」と位置付けたCTBT早期発効への言及はなかった。核兵器廃絶を明確に約束した前回(二〇〇〇年)の合意内容にも触れなかった。
新味はない。が、「各国の反感を買う表現はなく、米国政府の意見が強硬路線で統一できていない弱みを見せている。譲歩の余地を感じた」と反核市民団体ピースデポ(横浜市)の梅林宏道代表は分析する。CTBTにあえて「反対」と言わなかったことに、外務省も「交渉の余地がある」ととらえる。
被爆国が米国の譲歩をどれだけ引き出すか。原爆展見学を単なるパフォーマンスに終わらせないためにも、その努力と行動を求めたい。
(2005.5.4)