国連改革・再検討会議の行方 大島賢三大使に聞く
NPT 米露は責任自覚を
常任理入り 楽観視できず
国連大使の大島賢三氏(62)は、広島市東区出身で被爆者でもある。米ニューヨークにある日本政府国連代表部で二十三日(現地時間)、焦点である国連改革の現状や、開催中の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の行方などについて聞いた。(宮崎智三)
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「核軍縮を保有国に迫るのが被爆国日本の責務」と話す大島大使
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―安全保障理事会の常任理事国入りの見通しはどうですか。
国連は(第二次世界大戦の)戦勝国の組織。その中枢の安保理に、旧敵国で敗戦国だった日本やドイツが常任理事国として入ることは、国際的な意味で戦後が終わる象徴かもしれない。しかし、非常に難しい交渉だ。楽観的になるわけにはいかない。
国連自身にもイラク戦争の対応などで批判があり、テロ対策をはじめ、国際社会の期待に応えられるようにするにはどうすればいいのか、課題はめじろ押しだ。だが、各国の利害が入り乱れ、改革は簡単には進まない。
―核兵器をめぐる国際情勢をどうみますか。
イランが秘密裏に核開発計画を進め、北朝鮮はNPT脱退や核兵器製造を宣言した。大変大きな問題だ。直面する核拡散の危険に歯止めをかけないといけない。再検討会議できちんと処理されるべきだが、どこまで対応できるのか。まず拡散を防ぐ。同時に核軍縮でも進展を求めていく。両方やらないといけない。
―各国の意見対立で、悲観的な見方も出ている再検討会議の最終文書採択の行方は。
拡散防止体制に大きな脅威が突きつけられている。ほころびがこれ以上大きくならないよう、効果的な手を打たないといけない。会議はまだ数日間の折衝があるが万一、何の成果もなければ、失望だけではなく、国際社会に与える影響は好ましくない。何か実績を残さないといけない。
拡散防止を言うからには、核兵器国自身が核軍縮の約束を実行しないと説得力がない。そこを核保有国に強力に迫っていくことが、被爆国としての日本の重大な責務だ。
―前回(二〇〇〇年)の再検討会議で「明確に約束」された核兵器廃絶が遠のいていますが。
核兵器保有国、特に米国とロシアが責任を感じて核軍縮に向かってほしい。動かすのは国際世論しかない。すぐ成果が見えなくても、あきらめるのではなく、辛抱強く努力することが必要だ。
米国はもう少し超大国としての立場を踏まえ、対応してほしい。国際社会に持つ大きな責任を十分果たしていないような気がする。包括的核実験禁止条約(CTBT)や地球温暖化防止の「京都議定書」に背を向けるのではなく、国際的な規範や制度づくりを進んでもり立ててほしい。
おおしま・けんぞう 東区の牛田大橋たもとにあった自宅で被爆した。2歳だった。母は被爆死。67年外務省に入り、国連事務次長(人道問題担当)や駐オーストラリア大使などを歴任し、昨年12月から現職。
(2005.5.25)