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CONTENTS:
劣化ウランの特性-湾岸戦争とは-
劣化ウラン弾の影響
その他の影響

劣化ウラン弾の主な使用地域
(地図)



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危険知りつつ…兵士の防護策とらず

湾岸戦争で米軍が使用した120ミリ砲の劣化ウラン弾
湾岸戦争で米軍が使用した120ミリ砲の劣化ウラン弾
劣化ウラン弾断面図
≪劣化ウラン弾の影響≫

 湾岸戦争に参加した米軍兵士六十九万六千人のうち、劣化ウラン 弾による汚染地帯に身を置いた兵士は、四十三万六千人とされてい る。

ダン・フェーヒーさん 米軍の武器使用・解体などに伴う環境や人体への影響を調べてい る民間の「軍事毒性プロジェクト」のダン・フェーヒーさん(31)=写真・ ワシントンDC在住=は、情報公開法で入手した資料を基に、一九 九八年三月に「約四十万人の兵士が劣化ウランにさらされた可能性 がある」と公表した。

 米国防総省は「人数に全く根拠がない」と、フェーヒーさんを厳 しく批判した。しかし、退役軍人やその家族らでつくる「全米湾岸戦争 リソース・センター(NGWRC)」(本部・ワシントンDC)な どの圧力により、八カ月後に劣化ウラン弾の使用地域の地図を公 表。四十三万六千人の地上軍兵士がクウェート、イラクの劣化ウラ ン弾使用地帯に入ったことを認めた。

 劣化ウランの危険性については、湾岸戦争以前から指摘されてい た。

 例えば、劣化ウランの医学、環境評価をした七四年の軍の報告 書。それには「戦闘状況下で劣化ウラン弾を広範に使用した場合、 その周辺では劣化ウラン混合物の体内への吸入、摂取、着床が著し い可能性がある」と記す。

 軍と契約関係にある化学応用国際社が九〇年七月に出した報告書 にも、その危険性が明確に述べられている。劣化ウランを「低レベ ルのアルファ放射線放出物質」とした上で「体内被曝の時はがんと 関連し、化学的毒性は腎臓(じんぞう)損傷の原因となる」と記 述。「兵士が戦場で煙霧状の劣化ウランにさらされると、物質が持 つ放射線や化学的毒性の潜在的な影響を強く受ける恐れがある」と 警告する。

 このように劣化ウランの危険性については事前に分かっていなが ら、国防総省は兵士たちに予防教育もしなければ、防護措置も取ら なかった。


死のハイウェイ
死のハイウエー 破壊されたイラクのトラック、タンクロー リー、乗用車…。クウェートからイラク国境のサフワン、バスラへ の道は、破壊のすさまじさ故に「死のハイウエー」と米兵に呼ばれ た(1991年3月、イラク南部)=キャサンドラ・ガーナーさん 提供
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無防備
無防備 友軍の劣化ウラン弾で破壊された戦車を本国へ運ぶ ため、作業に従事する米軍兵士。放射能汚染防護措置を全く取って おらず、全員が劣化ウラン微粒子を体内に取り込んでしまった(1 991年5月、サウジアラビア)=ダグラス・ロッキーさん提供
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調査
調査 「戦利品」として米国へ持ち帰ったイラク軍戦車で、 劣化ウラン弾を発車し、放射能汚染状況と防護対策について調査す る米軍兵士。汚染防止のための防護服や防護マスクを着けている (1995年6月、米ネバダ州のネバダ核実験場)=ダグラス・ロッキ ーさん提供
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 九三年、会計検査院(GAO)がまとめた報告書では「陸軍は劣 化ウランによる適切な汚染対策を講じなかった」と指摘。その理由 として、健康を失った当事者には受け入れ難い軍の弁明を紹介して いる。「戦闘中やその他の生命を脅かされる状況下では、戦闘によ る危険の方が、劣化ウランによる健康へのリスクよりはるかに高 い。陸軍高官はこのため、防護対策は無視できると信じていた」 と。

 この結果、二十、三十代の多くの若い兵士が戦争終結後に発症し、命を失った。

 ≪その他の影響≫

 湾岸戦争では、劣化ウラン弾による健康障害だけでなく、米食品 医薬品局(FDA)で認可されていない薬の投与や、油田火災によ る煙害、停戦後にイラクの化学兵器貯蔵所を爆破、その際に放出さ れた毒性物質による影響など、さまざまな健康障害の要因が考えら れている。

 兵士たちが軍の命令で強制的に服用しなければならなかった薬品 には、抗化学兵器剤の臭化ピリドスチグミン(PB)、生物兵器で あるボツリヌス菌に対するワクチン、炭疽(そ)病予防薬であるア ントラックスなどがある。NGWRCの調べでは、PBは二十五万 人、ボツリヌス・ワクチン八千人、アントラックスは十五万人がそ れぞれ服用したとされる。

 湾岸戦争に参加した米軍兵士六十九万六千人は、イラクがクウェ ートに侵攻した一九九〇年八月二日から、友軍の劣化ウラン弾で破 壊された米軍戦車を米国に送り返すなどの作業に従事した兵士ら が、最後に帰還した九一年七月三十一日までの人数である。このう ち、九九年七月までに五十七万九千人が除隊、十一万七千人がなお 軍に所属している。

連載第1部 超大国の陰 米国
1 誤射 体中に破片食い込む 骨がん?苦闘の日々 2000/4/4へ

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