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市民球場のブルペンで最後の投球をする井上さん(撮影・天畠智則)
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広島市民球場(中区)で最後のプロ野球の試合があった22日、広島東洋カープの打撃投手でプロ30年目の井上卓也さん(51)も万感の思いで過ごした。球場と同じ1957年生まれで、球界最年長の打撃投手。「お疲れさん」。野球人生の大半を共にし、一足早く降板する“同級生”をねぎらった。
井上さんはブルペンでの投球後、黙々と観客席を歩いた。内野に敷かれたシートに、ふと表情が緩む。「あの日もこんな感じだった」。市民球場最後のリーグ優勝を飾った91年、グラウンドでビールかけに酔いしれた記憶は今でも鮮やかだ。
愛媛県出身で、79年にドラフト外で入団。85年に打撃投手へ転向し、25年にわたって毎日110球前後を投げ続ける。
山本浩二、衣笠祥雄、高橋慶彦…。歴代の名打者たちの快音を誰よりも多く聞いてきた。「駆け出しのころに衣笠さんから『ぶつけてもいいから、内角に投げてくれ』と言われ、ひどく緊張したな」と懐かしむ。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)代表の打撃投手も務めた。「おれはまだまだ頑張るよ」。打者の快打とチームの勝利を無上の喜びとする裏方人生は、新旧の球場をまたいで続いていく。(加納優)
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