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球場跡地、再び不透明
広島市…大幅変更に応じず/議会…具体的対案示さず

2009.3.27

 広島市民球場(中区)の跡地利用計画について、市議会は26日、関連予算の削除という「意思表示」で計画の再考を求めた。この日閉会した定例会の質疑で市は、折り鶴展示施設の必要性や集客力をめぐる議会の疑問を解きほぐせなかった。都心部に生まれる広大な空間の将来像は再び不透明になった。

表

 「官民共同の街づくりを進める心積もりでいたが、水を差された」。秋葉市長は定例会閉会後の記者会見で悔しさをにじませた。

 市の予算案から削除された関連費約1900万円の内訳は、(1)地元商店街との協議費(2)跡地の8割を占める公園の設計費の一部(3)隣接する広島商工会議所ビルの移転にからむ協議費の一部―など。ようやく具体化に踏み出そうとした局面での「待った」である。

 秋葉市長の政治手法に批判的な会派を中心に、議会には大幅な修正を求める声が強い。「折り鶴施設は必要ない」「集客力が弱い。計画の再構築を」などが理由だ。市幹部は「折り鶴施設への異論は承知していたが、ここまで時間をかけてまとめた。撤回しては政治的な敗北」と解説してみせた。

 秋葉市長は、広島商工会議所から要請があった折り鶴展示施設の位置変更に応じる「柔軟な対応」も強調した。だが、議会側の要求をのむ格好となる大幅変更に応じる考えは示さなかった。

 市は、公募し選んだ優秀2案に、商議所からの提案を反映させて現計画をつくった。商議所はこれを受け入れ、跡地隣接のビル移転で協力する姿勢だ。一方で地元商店街の反対は強く、賛否の構図は議会内だけでなく、経済界でも絡み合う。

 秋葉市長は現計画を基本に推進を目指す。だが、予算がつかなかった以上、当面の具体化は困難になった。一方の議会も「待った」をかけるまでに具体的な対案を示す機会はあったはずである。

 市民の関心が高い都心再生プロジェクトを停滞させてはならない。今こそ市と議会が地域づくりの両輪として、市民を巻き込んだ合意点を見いだすべきだ。(東海右佐衛門直柄)

 ■支持と戸惑い交錯 関係者

 広島市民球場の跡地利用計画の関連予算案を削除したことに対し、関係者には「支持」と「戸惑い」が交錯した。

 「自然豊かな空間に市民の工夫で人を集める方向性は、理解を得られていたはず」。市が公募した跡地活用案の選考委員会で委員長を務めた小林治人氏=東京ランドスケープ研究所社長=は戸惑いを隠せない。

 建築や公園設計の専門家たち委員九人は「ハコモノでは市民利用も経済効果も期待できない」と一致したという。「市民意見を踏まえ議論を重ねた末の結論。尊重を」と訴える一方、折り鶴展示施設は「必要性は委員の意見も割れた。今後は市民の判断に委ねるべきだ」と注文した。

 跡地の隣接地のビル移転で計画に協力する姿勢を示す広島商工会議所は「コメントできない」とした。

 一方、計画見直しを求める地元協議会で会長を務める市中央部商店街振興組合連合会の望月利昭代表理事は「市民が折り鶴展示施設を望んでいないことが示された。商業地域のそばに公園はもったいない。にぎわい創出が必要」と強調する。

 サッカー専用スタジアム建設を求める県サッカー協会も市議会の判断を歓迎した。中山正剛事務局長は「あの場所は広島のスポーツ文化のシンボル。市にあらためて要望書を出すことも検討したい」と話していた。(水川恭輔、東海右佐衛門直柄)


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