100倍楽しむ 〜 小倉百人一首編 〜

※歌は新編国歌大観(角川書店)から引用。札は、子どものための民俗資料館(呉市)所蔵


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あまつかぜ 雲のかよひぢ 吹きとぢよ
をとめのすがた しばしとどめむ

 古今和歌集から選ばれた僧正遍昭の歌。「風よ、雲を通って帰る道を遮ってくれ。天女の姿をしばらくとどめておきたい」という優雅な一首。女性に姿を変え、僧を食い殺すなど悪事を繰り返すキツネの正体を見破り、退治する演目「悪狐伝」で歌う団が多い。



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わが袖は しほひにみえぬ おきの石の
人こそしらね かわくまもなし

 千載和歌集から二条院讃岐の歌。「引き潮でも見えない沖合の石のように、私のそでは涙でぬれている」という切ない恋の歌。夫に捨てられた女性が鬼となり、恨みを晴らそうとする演目「貴船」で歌う団が多い。わら人形が身代わりとなり、夫は助かる。



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世の中よ みちこそなけれ おもひ入る
山のおくにも しかぞなくなる

 千載和歌集から選ばれた皇太后宮大夫俊成の歌。「思い詰めて入った山の奥でも、悲しげに鳴くシカの声がする。世の中には悲しさから逃れる手段はないのか」と嘆く歌。平将門の敵討ちを狙い、鬼となる娘を描いた演目「滝夜叉姫」などで歌う団が多い。



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おほえ山 いく野のみちの とほければ
まだふみもみず あまのはしだて

 金葉和歌集からの小式部内侍の歌。「大江山を越え、生野を通る道は遠いので、天の橋立へ行ったことはない」が主な歌意。神酒の力で、遠く険しい大江山の岩屋にたどり着き、酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼を退治する演目「大江山」で歌う団が多い。



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みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに
みだれそめにし われならなくに

 古今和歌集から選ばれた河原左大臣(かわらのさだいじん)の歌。「陸奥で織られる布の模様のように私の心が乱れるのは、あなたのせいだ」との恋心を詠んだ歌。夫と死に別れた恨みから、山賊になった女性の悲哀を描いた演目「山姥(やまうば)」で歌う団が多い。


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