「なんのカギ?」   その6 ねむくなったクマ

 トランクは紫(むらさき)色に、冷蔵庫(れいぞうこ)は黄緑色(きみどりいろ)に、ドアはオレンジ色にぬりました。

 家(いえ)は見ちがえるほど明(あか)るくなりました。

 「きれいな色がいっぱいあってうれしいよ」と、クマはいいました。それから黄色いピアノのふたをあけ、ポロロンとひきました。 イラスト

 「きれいな色なら、なんでも
  すきさ
  青い空、白い雲、緑の山
  きれいな色なら、なんでも
  すきさ
  赤い花、黄色い月、七色の
  虹(にじ)

 えりなはぱちぱちと手をたたきました。

 「ちょっとまってて」と、クマはいうと、奥(おく)のへやにいきました。そしてでてくると、白いズボンと白いセーターのかわりに、緑色のズボンと赤いセーターを着(き)ていました。

 「とってもすてき」と、えりなはいいました。

 「えりなちゃん、ぼく、やっぱりシロクマにはなれない気がする。ぼくはぼくのままでいいや」と、クマはいいました。

 パイのいいにおいがただよってきました。

 「あ、そうだ。パイが焼(や)けてるよ」と、クマはいって、えりなを台所(だいどころ)につれていきました。

 クマはストーブをつけ、それからお皿とフォークをピンクのテーブルにならべ、えりなにパイを切(き)りわけてくれました。

 ふたりでアップルパイをたべ、あたたかい紅茶(こうちゃ)をのみました。とってもおいしいアップルパイでした。

 「ああおいしかった。ごちそうさま」

 「どうしてだろ。ぼくは、なんだかきゅうに眠(ねむ)くなってきたよ」と、クマはいいました。

 「わたし、そろそろおうちにかえらなきゃ」と、えりなはいいました。

 「さようなら」といって、クマの家をでると、家の前(まえ)のさっきカギが落(お)ちていたのとちょうどおなじ場所(ばしょ)にカギが落ちていました。青いリボンの、えりなのカギです。えりなはカギをひろってポケットに入れました。

 雪(ゆき)はいつのまにかやんでいました。雪のつもった道(みち)をえりなは家にかえりました。

(おわり)

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