地域づくり視野に住民連携
山口県 ―豊かな流域づくり構想
山口県は、県央部を流れる椹野(ふしの)川を舞台にした「やまぐちの豊かな流域づくり構想」を策定。本年度から産学官や民間非営利団体(NPO)、流域住民が連携し、環境保全や地域づくりを進める試みが始まっている。
椹野川は、中国山地から山口市、阿知須、秋穂、小郡3町を流れる二級河川。水量が減ってアユが育たず、河口近くの干潟ではアサリの漁獲量がゼロになるなど深刻な問題を抱える。
構想では、森と川、海をはぐくみ、人がはぐくまれる共生・循環型社会づくりを目指す。清流(水質)保全▽生態系保全▽健全な水循環▽川とのかかわり▽地域産業活性化▽流域の連携を柱に据え、環境対策や地産・地消の促進、観光地づくりなど計13の事業を展開する。
その中で、山口市は清流を守るための条例を九月に制定し、市や市民、事業者の責務を明記。食用油を分別処理し、洗剤の使用をできるだけ控えるなどの具体的な項目を盛り込んだ。上流部の同市仁保地区では、住民が2年計画で広葉樹を植樹する源流の森づくり(4ヘクタール)も進める。
川や海の魅力を子どもたちに伝えようと県などは、同市内を流れる一の坂川での生物観察、河口の干潟での潮干狩りを企画した。下流では、干潟再生に向けた調査、研究が続く。
民間主導で地域通貨「フシノ」を発行。流域内でのボランティア活動の対価で、道の駅などの協力店で割引を受けられる。「流域住民の交流を促進する狙いもある」と言う。
構想は、研究者や農協、漁協、森林組合の関係者ら21人で構成する委員会で策定。委員の太田政孝・椹野川漁協参事(60)は「以前から流域全体での取り組みが必要だと思っていたが、難しいとあきらめていた」と打ち明け、官民挙げての活動の広がりを喜ぶ。
来年度以降も事業がめじろ押しだ。住民参加型のビオトープ造成のほか、流域の歴史と文化、伝統産業などを紹介する情報マップを作り、観光振興も図る。
「住民や市民団体などが主体にならないと、豊かな流域づくりは不可能」と事務局の山野元・県環境政策課主査(46)。流域の人材育成や地域おこしの起爆剤にする狙いもあり、これからの環境保全活動のモデルになりそうだ。
このページのTOPへ
|