中国新聞
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パキスタンで反核・平和運動 フッドボーイ教授インタビュー
2002/02/27
力の支配 限界 理性取り戻せ

■平和の仲介者 発信・交流を -ヒロシマの役割-

 ―米国のブッシュ政権は、アフガン攻撃でパキスタンやインドの 協力を得るために、核実験に対する制裁措置を解除しました。日本 も米国と同じ措置を取りましたが、結果として印パの核保有を容認 した形です。どう思われますか。

 経済制裁はむろん、インドよりも経済力の弱いパキスタンにより 大きな影響を与えてきた。残念なのは、ほとんど何の条件も付けず に両国に経済援助を再開したことだ。わが国の政府予算は、38%が 軍事費、負債の支払いが48%、残りはわずか14%。それを教育や医 療、道路建設などに充てている。

 負債に含まれる軍事費を含めれば50%を超える。援助をしてもら っても、軍事費に消えるのでは民衆にとって何の意味も持たない。 非核政策を唱える日本は、使い道に対してもっと強い影響力を発揮 してもらいたい。それはインドに対しても言えることだ。

 ―広島の市民グループは、二〇〇〇年の夏から印パの子どもたち をそれぞれ五、六人ずつ被爆地に招いて交流を続けています。彼ら は被爆体験を聞いたりする中から核兵器の恐ろしさを学び、相互信 頼も生まれているように思います。

 そのプロジェクトは私も知っている。素晴らしい事業であり、ヒ ロシマが「平和の仲介者」となり得ることを示す良き例だ。今、印 パで反核・平和活動をしている者は、電子メールでしかやりとりが できない。両国の若者たちがもっと自由に直接交流でき れば、相互理解が深まり、確実に破滅をもたらす核兵器で対立する ことの愚かさを学ぶことができるだろう。

 今はともかく完成したビデオをインドの仲間とともに各地で上映 しながら、両国民に「理性を取り戻せ」「武器ではなく生活の向上 を」と訴えていきたい。その精神はそのまま平和なアフガン復興へ の道にもつながるはずだ。

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