二〇〇一年七月に就任したバートン・ベネット理事長(65)に、放影研の研究の現状と将来構想を聞いた。
 ―研究成果をどう自己評価しますか。
「これまでに得られた知見やデータは、世界的にも重要」と力をこめるベネット理事長

 日米双方の研究者が関与し、科学的精度は高いと考える。放射線の影響によるがんなどの増加を解明し、放射線のリスク(危険性)を推定するうえで重要なデータを得た。だが、(がんになる)プロセスは、個人の感受性や喫煙などの生活環境も関係し、分かっていない。遺伝学や放射線生物学的にアプローチしている。
 ―被爆者の高齢化が進んでいます。さらに調査を続けるのですか。
 二十歳未満で被爆した人の多くは生存している。さらに二十年から二十五年かけ、生涯にわたる調査を続けることが必要だと考えている。(遺伝的影響を把握するための)被爆二世調査にも、さらに時間がかかる。
 ―被爆者から「調査はしても治療はしない」と批判を受けてきました。どう受け止めますか。
 被爆者の方の協力で重要なデータが得られた。(前身の)原爆傷害調査委員会が、被爆者を治療しなかったのは残念な経緯だと思う。今は被爆者に、健康面でのアドバイスもするし、医療機関への紹介もしている。血液などを調べ、疾患にかかりやすいかどうかを予測できれば、予防にも役立つ。被爆者でない人への応用も考えたい。
 ―「残留放射線を過小評価している」との批判もあります。
 残留放射線のリスクは低いだろうが、(人体に影響する)可能性はあると思う。染色体異常を調べる方法もあるが、高線量でないと詳細なデータは得られない。評価は難しく、現段階で調べる計画はない。
 ―老朽化した研究所の移転も含め、放影研の将来をどう考えますか。
 日米政府間の同意や話し合いが必要で、その結果を待っている。研究所の将来構想の素案はできている。向こう数十年間にわたって現在の調査を続け、(その後は)放射線情報センターのような役割・機能を果たせばいいのではないか。
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