▽勇気与え 今も現役
ゴトゴトゴト―。ビルの谷間を古めかしい路面電車が走る。近未来的なデザインの後続にもおかまいなし。原爆投下の目標とされた相生橋(広島市中区)を、モーターをうならせて渡っていく。
651号は1942年に造られた。3年後の夏、市役所近くで被爆した。広島電鉄の被爆電車で、今も働く「現役」は651号と652号の計2両しかない。
被爆から3日後には、路面電車は己斐電停(現西広島電停)から天満町電停近くまで運行を再開した。「先輩方が復旧作業に励んだと聞いた。動きだした電車の姿に大勢の市民が勇気を得たはずだ」。ベテラン運転士の宮田多美男さん(61)=南区=は胸を張る。
緑とクリームのツートンカラーの車体は、のんびりと、それでいて力強いリズムを奏で続ける。復興にかけた市民のエネルギーを象徴しているようだ。(写真・坂田一浩、文・田中美千子)
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【写真説明】ビル街を走る被爆電車。相生橋も力強く渡っていく
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