中国新聞社

'99.5.9

核軍縮への道
中堅国からの働き掛け (1)

削減 保有国に強く迫る

アイルランド国連副代表
マイケル・ホーイさん(51)
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「来春のNPT見直し会議に向け活動を強めたい」と話すホーイさん(国連本部)
 独自決議案を提出

 ―アイルランドは昨年、八カ国でニュー・アジェンダ連合(NAC)をつくり、秋の国連総会で独自の核軍縮決議案を提出しましたね。

 最終的にはスウェーデン、ニュージーランド、エジプト、南アフリカ、メキシコ、ブラジルとわが国の七カ国で、スロベニアは抜けた。核軍縮を強力に押し進めなければと考える国々が協力し、決議案を作成。三十三カ国が共同提案国となって総会決議にかけた。結果は賛成百十四カ国、反対十八カ国、棄権三十八カ国だった。

 ―日本は棄権しました。

 話し合いを一緒に進めてきただけに残念だった。「核兵器を使用する最初の国にならない」など、核先制使用の変更を求める文言は、日本などが賛成しやすいように大幅に修正した。基本姿勢は、米ロなど核保有五カ国に核兵器廃絶への誓約を迫り、それが迅速に実現するよう誠実な交渉を求めていることだ。

 ―核兵器削減交渉の促進や警戒態勢解除など、要求は二十項目にわたっています。

 核兵器廃絶という最終目標を達成するために必要な一連のステップを具体的に提示した。国名こそ挙げていないが、核兵器保有能力を持つインド、パキスタン、イスラエルには核開発や配備の追求をやめ、核拡散防止条約(NPT)や包括的核実験禁止条約(CTBT)に加盟するよう要求もしている。

 印パの保有認めぬ

 ―印パ両国はNPTの不平等性を訴え、既に核実験を成功させています。それでも、核保有国とは認めないと・・・。

 そう。NPTで認知された核保有国として絶対認めることはできない。これ以上核保有国が増えることが世界にとっていかに危険であるか。国際原子力機関(IAEA)による査察免除など、保有国としての特権を与えるようなことになれば、さらなる連鎖反応を防げない。

 ―でも、両国は納得しないでしょう。

 納得はしていない。だからこそ、核保有国に核兵器廃絶に向けた軍縮を強く迫っているのだ。核不拡散と核軍縮はコインの表裏で、切り離せない。

 日本は積極行動を

 ―コソボ紛争をめぐるNATOによるユーゴへの空爆は、今後の米ロ軍縮交渉を困難なものにしませんか。

 非常に懸念しているが、米ロ関係の悪化は一時的なものだと考えたい。一日も早いユーゴ和平実現が肝心だ。ただ、コソボ問題に目を奪われて核軍縮の重要性を見失ってはならない。われわれにできることは、核廃絶を求める国を増やし、国連などを通じて核保有国に圧力をかけ続けるしかない。

 ―国連代表らにヒロシマ・ナガサキの被害の実態は知られていますか。

 原爆投下から半世紀以上がたち、人々の記憶から薄れているのではないか。被爆者の体験をはじめ、被爆地からの声がもっと国連などに届けられるべきだ。日本政府はその面で、もっと積極的であっていい。


【メモ】NATO非加盟国のアイルランドは、一九六八年に締結されたNPTの条文作成国となるなど核軍縮に積極的に取り組んできた。外務省のホーイさんは国連本部に勤務して五年。中堅国家からなるニュー・アジェンダ連合結成に貢献。本国ではNGOによる反核運動が活発である。



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