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みんなの平和教室

 瀬谷ルミ子(日本紛争予防センター事務局長)
 


前回の課題

 スーダンのように支援が必要な場所に、限られたお金を持ってきました。援助機関がすでに活動しています。必要な支援をするため、どう情報収集や準備をしますか。気をつけるべき点は何ですか。

 
 
瀬谷ルミ子 せや・るみこ

1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。

日本紛争予防センター http://www.jccp.gr.jp/
瀬谷さんのブログ「紛争地のアンテナ」
   http://ameblo.jp/seyarumi


「何が不足」リサーチ
自給自足アドバイス
新聞で寄付募る


多くの意見を送っていただきありがとうございました。前回述べたように、スーダン南部では国連機関、非政府組織(NGO)、外国政府など、多くの援助機関が活動している一方、水、衛生、医療、住居、食糧、生活費、教育、治安など、緊急に必要なものもたくさんあります。先週からスーダンの政治状況が不安定で、こうなると援助機関の活動も制約を受けてしまいます。100万円を持ってスーダンに降り立ったあなた。最初にすべきことは何でしょうか。


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まず必要なのは、「自分は何をどこまでできるか」を把握しておくことです。お金だけでなく、自分の身一つで何ができるかを理解する意味もあります。

広島市佐伯区、砂谷中の2年生から多くの意見が届きました。上川さやかさん、吉田彩乃さん、岩田沙季さんが言うように、勉強や生活に役立つ知識を教えてあげたり、得意なスポーツや遊びを一緒にしたり、話を聞いて心に傷を持つ子どもたちの心を開かせたりすることができれば、お金を使わなくてもできることが広がります。

お金を使った支援の場合、あなた自身の生活費も必要なので、それを引いていくら残るか考えなければなりません。

ほかにも、何を必要としているのか、住民に話を聞く必要があります。村人から話を聞くときには、最初に長老や村長にあなたの目的を伝え許可をもらい、村人をできるだけ多く集めた会合を開く形を取ります。伝統的な社会のしくみを尊重することにもなるほか、一部の意見だけで支援を決めることを避けられます。村の集まりに女性の参加が許されない地域もあるので、女性たちから話を聞く機会を別に設ける配慮も大切です。

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スーダン南部で住民の生活状況とニーズを調査する援助機関の人=手前(2月、筆者撮影)

また、その地域で既に活動している援助機関から話を聞くことも重要です。田形泰基さんが言うように、農業支援が必要な場合、すでに活動している団体から農作物の種、水源や土地の情報を集めることも、重要な作業になります。支援の重複を避けるため、枝折利沙さんが提案するように、他の国連機関やNGOの活動の情報を集めた上で足りない部分に支援をするのも一つの方法です。


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将来的に現地の人々が自分でできるように援助することも大切です。真辺加菜さんは、植物の育て方や農機具の作り方を教えて、自分がいなくなったあとも人々が作れるようにすることを提案してくれました。

治安も、現地政府が自ら責任を持ってやるよう促すことが必要です。軍や警察が本当に人々の安全を守っているか、住民に公平に対応しているか、について問題がありそうな場合は、支援や介入が必要でしょう。

援助をする際、「できない約束はしない」ことも大切です。確実に自分ができると分かってから人々に伝えないと、長い戦争が終わってようやく希望を持った人々を裏切ることになってしまいます。特に心に傷を抱えていたり、日々の生活に不満を持っている人々は、こういうことにとても敏感なのです。

さて、あなたがスーダンでできることは、100万円を使い切ったら終わるのでしょうか。福山市のおかださんは、新聞にスーダンの現状について記事を載せてもらい、寄付を募ったりして支援を続ける方法を提案しています。協力者を増やせば、できることがさらに広がるということです。

紛争地の現状を知ってもらい、より多くの人に関心を持ってもらうようにする。これは、現場で働く者としての使命の一つであると私も考えています。