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「被爆60周年」に向けて 核廃絶、各自が行動を '04/8/8

 特別編集委員 田城 明

 広島国際文化財団(山本信子理事長)が主催する広島世界平和ミッション第三陣メンバーに同行してフランス、英国、スペインを巡り、先月二十九日に帰国して一週間余。時差ぼけが取れないままに、翌日から広島を訪ねてくる国内外のジャーナリストや市民らと交流したりするうちに、被爆五十九周年の平和記念式典を迎えた。

 時の経過とともに、年々参列する被爆者の姿が減るのは寂しい限りである。が、そんな中で外国人の姿は昨年にも増して多かったように思える。

 その中には、今回の旅で交流したフランス人や英国人、第一陣で会ったイランの毒ガス被害者らの姿もあった。とりわけ、イランからの来日実現にはビザ取得など不安要素もあっただけに、広島で再会できたことに深い感慨を覚えた。イラン側の熱意だけでなく、平和ミッションに参加したメンバーらの積極的なサポートなしには実現しなかったからだ。

 一行八人のうち、体調を気遣って早めにホテルに戻った三人を除き、早朝の平和記念式典から夜のとうろう流しまで、長い「ヒロシマ」の一日をメンバーらの案内で体験した。

 「市民と行政が協力して参列者に冷水やおしぼりを提供するのには感心した」「広島市長の平和宣言にあったように、米国政府の在り方を批判する日本人が多いことに気付いた」…。

 小さな出来事から政治姿勢に至るまで彼らは、被爆地で体験したことを本国へ持ち帰る。

 フランスの首都パリで会った「フランス平和運動」のピエール・ビラルド共同議長(40)は、一昨年に次いで二度目の広島訪問である。

 「被爆地を訪ねることで、核戦争が何をもたらすかを深く記憶し、核兵器廃絶や平和を願う多くの人々に接することで自ら鼓舞される」

 ビラルドさんのように、被爆地広島の存在の意義をこのようにとらえる人たちは、徐々に世界に広がりつつある。限られた体験とはいえ、核問題取材などで世界各地を訪ねた実感である。

 ビラルドさんは「同じ体験をさせたい」と、被爆六十周年の来年八月には、フランスから多くの若者を広島に連れてきたいという。

 だが、核保有国や紛争地の人々に原爆被害の実態を伝えたり、憎しみや報復ではなく、「平和と和解の心」を伝える平和ミッションも、かつて日本が侵略したり、植民地化した北東アジアでは中東やヨーロッパなどのようにはいかない。

 第二陣が訪ねた中国については、同僚記者が先月二十六日付から八回にわたって「歴史を見つめて」と題して本紙に連載したように、厳しい反応が返ってくる。

 そんな反日感情の強い母国へミッションのメンバーとして「里帰り」した広島大大学院生の岳迅飛さん(32)=東広島市=は、六日に出演したラジオ番組でリスナーにこう語りかけた。

 「私は被爆者から聞いた『平和の原点は人の痛みを受け止めることだ』というその言葉に感動を覚えた。中国人には日本人に『同じ痛みを受け止めてほしい』という気持ちがある。そんな立場の違いからくる意見の対立はあったが、互いに率直に話し合うことで理解は深まったと思う」

 ヒロシマのメッセージを伝えることは、必ずしも容易ではない。しかし、大事なのは相手の立場にも思いをはせ、互いに人間としての信頼関係を築くことから始めるしかない。

 一方でテロや報復戦争が続くその延長線上に「核戦争の危機」や、環境汚染など「核時代に生きる危険」を感じ取っている世界の人々は多くいる。

 広島市の秋葉忠利市長は平和宣言で、八月六日から来年の長崎「原爆の日」までを「核兵器のない世界を創(つく)るための記憶と行動の一年」にと呼び掛けた。

 昨年末から準備し、被爆六十周年へと続く平和ミッションの旅は、市民の立場からの実践ともいえる。国籍や民族、宗教の違いを超えて、自覚した個人やグループが、反核・平和へのさまざまな取り組みをして、はじめて目標に近づける。

 明日、原爆記念日を迎える長崎より一足早く、広島は被爆六十年に向けてのスタートを切った。広島で再会した人々らとともに、自らも残りの平和ミッションを着実に継続し、戦争や核兵器のない世界実現に向け、わずかなりとも貢献できればと思う。


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