中国新聞


尾道商高創立120周年 飛躍への挑戦 <1>
人材育成


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定規を使って礼の仕方を学ぶ生徒

 尾道市古浜町の広島県立尾道商業高校は二十日、創立百二十周年を迎える。公立の商業学校では県内で最も古く、二万人を超える人材を輩出。地元経済界などを支えてきた。グローバル社会を迎え、人材育成の伝統はより実践的なキャリア教育へと進化する。飛躍に向けた新たな挑戦を紹介する。

 ▽即戦力目指し特別授業

 「背筋、手の先を伸ばして…はいっ礼!」。六限目の教室。三年生が進路指導主事の教諭から、四五度の礼の仕方を教わる。七限目の別の教室では、二年生が小論文を通して自分の考えを相手に伝える猛特訓をする。週一回の「キャリアの時間」である。

 キャリア教育は、コミュニケーションや情報収集、課題解決能力の養成など、即戦力となる人材を育てるのが狙いだ。プレゼンテーション技法の習得や職業インタビュー、校外での経営実習、中学校への出前授業など二〇〇四年度から全校生徒を対象に取り組む。

 岩原弘泰校長(54)は「他校は総合的な学習の時間などを利用してキャリア教育を進めているが、本校は週に一時限、単独の授業でやっている」と強調。「知的、技能的、態度的」の三つの学力向上を掲げる教育理念実現への実践と位置付ける。

 卒業生は製造、サービス、金融業、行政機関など幅広い分野で活躍する。「人に笑顔を与えられるような商売をしたい」。キャリア学習があった日、大学の商学部進学を希望する情報管理科三年の内海美咲さん(18)は、面接試験での自己紹介やあいさつの仕方を真剣に学んでいた。

 学校創立にかかわった初代の市邨(いちむら)芳樹校長は「世界はわが市場」と語ったと伝えられる。激変する世界経済の中で、その言葉は重みを増し、より広い視野や柔軟な発想力、実践力を持つプロ育成が求められる。

 〇三年に県の商業高校拠点校の指定を受け、時代に即応したカリキュラムの充実を図る。約千四百万円をかけてプレゼンテーションルームやCM制作のスタジオ、情報発信スペース、看板・ポスター製作などの作業工房を整備する計画。十二月に着工し、年明けから利用を始める。

 これらの施設では、尾道ならではの観光産業を切り口にした商業教育を展開する予定だ。岩原校長は「地元企業と協力して土産品の開発などができれば。県東部の情報集約・発信拠点を目指したい」と期待を込める。(田儀慶樹)


クリック 尾道商高 1888(明治21)年10月20日、当時の尾道久保町に公立尾道商業学校として創立。3度の移転を経て尾道水道近くの現在地に。1968年、現校名になった。商業、ビジネス会計、情報管理の3学科で構成し、昨年度までの卒業生は2万1908人。9月1日現在の生徒数は574人。

(2008.10.15)


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