主な研究 |
寿命調査と成人健康調査 |
被爆による健康への影響を解明する上で重要な基礎となる。一九五〇年の国勢調査で把握した被爆者約九万四千人と
非被爆者約二万六千人(入市被爆者を含む)の計約十二万人を対象に、死因を追跡するのが寿命調査。五八年に始まっ
た成人健康調査は、約十二万人から約二万三千人を抽出し、二年に一度のペースで問診や健康診断を続けている。
各人の被爆場所から推定した被曝線量をベースに、疾病の罹患(りかん)率との関係を分析した結果、白血病や胃が
ん、肺がんなどの発症に放射線の影響がみられた。B・C型肝炎や糖尿病などとの因果関係は解明されていない。
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胎内被爆 |
母親の胎内で被爆した約三千六百人(非被爆者を含む)が対象。六〇年代までの研究で、原爆小頭症と精神遅滞の増
加を確認した。厚生省(当時)は六七年、「近距離早期胎内被爆症候群」の病名で、患者の症状が放射線に起因してい
ることを認め、公的援護の対象としている。
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被爆二世 |
四八年から六年間、広島、長崎両市の新生児約七万七千人(非被爆者を含む)の奇形、死産、出産直後の死亡などを
調査して以来、現在も研究が続く。四六年から八四年に誕生した被爆者の子ども八万八千人を追跡調査。染色体異常や
タンパク質の変化についての調査もあったが、現段階では、親が受けた放射線が被爆二世の健康に与える影響は立証さ
れていない。
被爆二世の多くが壮年期を迎え、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症と放射線との因果関係を調べる取り組みを
二〇〇一年から始めた。
飲酒・喫煙歴や運動習慣の有無などを問うアンケート(郵便調査)を経て、昨年九月までに約一万二千人が健康診断
を受けた。二十八日に分析結果を公表する。
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原爆放射線量推定 |
原爆が放出した放射線の総量と被爆者がいた地点を基に、一人一人の被曝線量を推定する。六五年に最初の推定方式
「T65D」を策定。DS86、DS02に修正されて現在に至る。
爆心地周辺で採取された金属類や瓦などの被爆試料から測定した放射線量を基に計算式をまとめた。寿命調査の対象
者から聞き取った被爆状況から、屋内や物陰で被爆した場合の「遮へい」の影響も考慮している。国の原爆症認定基準
にも活用されている。
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