広島市安佐北区で4人生き埋め

'99/6/30 朝刊

 午後四時過ぎ、広島市安佐北区亀山九丁目の農業河久保敏雄さん (61)方の木造家屋が押しつぶされ、一家四人が生き埋めになった。 「ドーンという音がした直後、夫の『危ない』との声が聞こえた。 自分と娘は逃げ出してどうにか助かったのですが」と妻の一江さん (55)は、泥水で覆い隠された自宅付近を見ながら肩を落とした。

 敏雄さんは、自宅前の川が増水し、決壊しそうになったため、戸 板を立てて流れを変えようとしていた。当時の時間雨量は四四ミリ。 バケツの水をひっくり返したような豪雨だった。

 生き埋めになったのは、敏雄さんのほか、離れにいた父の勝見さ ん(87)とチエミさん(82)。母屋には、生まれてちょうど一ヶ月にな る孫の原田翔太ちゃんもいたが、あっという間に土砂と泥水に飲み 込まれた。

 土砂崩れの六時間後、翔太ちゃんは母屋のベビーベットの中から 見つかった。発見した消防隊員によると、崩れ落ちた屋根のわずか なすき間にいて、外傷もなかった。毛布にくるまれて助け出される と、手を握りしめ、体を震わせていたという。

 「生きている」との声でどよめきもあがった。駆け付けた父親の 会社員聡さん(28)も何度も声をかけた。しかし、救急車で病院に運 ばれた時には、すでに亡くなっていた。

 一方、残りの三人の救出作業は、投光機で照らされる中、可部署 の警察官や消防隊員など約百九十人があたった。

【写真説明】土石流で屋根を残すだけとなった河久保さん方。生き埋めになった家族の姿を求め、必死の捜索活動が続く(29日午後5時40分、広島市安佐北区亀山9丁目)=写真左 写真右は「生きていてくれ」。無事を祈る住民たちが、救出作業を見守った(29日午後5時半、同)


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