避難勧告が出た観音台団地住民/広島市

'99/7/3 朝刊

 「土石流がもう一度来たら、家が壊れる」―。急傾斜の山が迫る 広島市佐伯区観音台三丁目、観音台団地の二地区、計百六十世帯に 二日午前八時半と午後三時、避難勧告が出た。三日前には、民家の 直前まで立ち木や岩が迫る土石流の恐怖を味わったばかり。同団地 では一九八二年、別の谷筋で土石流が発生した。避 難した住民は「もう土石流を止めるダムはいっぱいなのに」と、不 安を募らせた。

 二日夜、避難所の五日市高校体育館には、約二百五十人が集まっ た。建設業増岡照義さん(51)は「小さいがけ崩れはあったが、こん なにひどいのは初めて。夜の雨で、もう一度崩れなければいいが 」。

 屋根をたたく、激しい雨音。「広島の砂は流れやすいと聞いた。 この次に起きたら、どうなるのか」。妻と夕方に来た会社員桜井明 博さん(51)の不安も消えない。

 団地では、八二年の台風などの際、別の谷筋で起きた土石流で大 量の倒木が流れ出した。今回の谷筋も八四年ごろに続き九三年、県 が砂防用の治山ダムを設置した。三丁目町内会の佐々木千明会長 (48)は「ダムがあるから安心していたのに、乗り越えて来るとは」 と住民の驚きを代弁する。

 大雨などの度に山が鳴る音に不安を感じていたという、避難中の 主婦(51)は「今回の現場は土砂で埋まり、危ない岩も残されてい る。道路はきれいにしたのに二次被害への対策はない。もっと住民 の気持ちを考えてほしい」と憤りを見せた。

【写真説明】雨で土石流が再び発生する危険性があるとして避難勧告が出された観音台団地(午後8時40分、広島市佐伯区観音台3丁目)


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