孤立住民 ヘリで救出/広島市佐伯区

'99/7/3 朝刊

 八人の死者、三人の行方不明者を出すなど、深刻な被害にさらさ れた広島市佐伯区内で二日午後、道路を寸断され孤立していた二つ の集落の住民を救助するため、広島市の消防ヘリコプターや救助隊 が出動した。午後五時二十分、広島県全域に大雨・洪水警報が発令 するなど、雨脚が強まる寸前の「脱出」だった。

 ヘリコプターが出動したのは、極楽寺山(六九三メートル)中腹 にある佐伯区五日市町下河内の大杉地区。豪雨による土砂崩れで林 道が寸断された同地区の農業中世良沢美さん(82)と妻のトミ子さん (78)と一人暮らしの植野シズミさん(83)の三人を救出した。

 電話は二十九日から不通。冷蔵庫の食料や畑のジャガイモで四日 間を食べつないできた中世良さんら。雨が止んだ一日、安否確認に 来た救助隊の避難の勧めに「周りに迷惑はかけられない」と断った が、再び雨脚が強くなると判断した広島市は二日午後三時、避難勧 告を発令。消防ヘリでの救助に踏み切った。

 三人をワイヤでつり上げる救出作業が終わったのが午後五時。そ の直後に雨は本格化し警報も発令。ヘリを操縦した同市消防航空隊 の喜多雄二郎隊長は「もう少し遅かったら飛べなかった。ギリギリ のタイミングだった」。西区の広島西飛行場に下り立った植野さん は「足も心臓も弱く、本当は一人では不安で…」とぽつり。救出に 感謝していた。

 一方、佐伯区五日市町石内の神原地区も、市街地につながる唯一 の道路が土砂崩れなどで寸断され、二十九日夜から孤立状態。雨脚 が強まった二日夕、避難勧告を受けた十世帯三十人が消防隊員とと もに同地区を脱出、石内公民館などに身を寄せた。

 二十九日以来、電話は不通となり、飲み水を井戸から汲み上げる ポンプも数軒で故障。不自由な生活を強いられていた。脱出の際は 消防隊員が先導。ぬかるんだ山道を歩いて避難した。


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