![]()
早期避難へ迅速情報 ―降水量など局地的に把握― 「六〇分雨量四〇ミリ超過が確認された」―。広島市中区の県庁南 館の一室で、消防防災課員がパソコン画面に映し出された文章を確 かめたのと同時に、県内十九カ所の消防本部・消防局と県警本部で もチャイムが鳴り、同じ画面が表示された。雨量が各地域の避難基 準に達したときも、情報は瞬時に届いた。 ●235カ所からデータ
五月二十六日、県が6・29豪雨災害を教訓に導入した緊急防災情 報システムの試行訓練である。システムは、県の砂防、河川、森林 保全の各課が把握する雨量観測局計二百三カ所と、広島地方気象台 のアメダス(地域気象観測システム)観測点三十二カ所を合わせた 計二百三十五カ所から、降水量のデータを一手に収集。気象台の警 報、注意報、降水予想画像などと併せて専用回線で防災機関に流 す。 以前は、局地的な大雨はなかなかつかめなかった上、市町村への 雨量データ伝達も、ファクシミリで十数分かかっていた。このた め、県は新システムの導入とともに、この一年で雨量観測局を百十 三カ所も増やしている。 通常、時間雨量四〇ミリか、総雨量一〇〇ミリを超すと災害の危険が 高いとされる。早期避難に向け、きめ細かく分かりやすい気象情報 を、迅速に伝える仕組みづくりが「6・29」後の課題だった。 広島地方気象台はこれまで、アメダスの観測結果と、気象レーダ ーで推定する降雨強度を組み合わせた解析で、最小五キロ四方の雨 量を一時間ごとに三時間先まで予測、発表してきた。午後に災害が 集中した「6・29」でも午前十時二十分に県全域を対象に大雨、洪 水警報を発表。短時間予報も出した。 しかし、アメダス観測点は災害が甚大だった広島市佐伯区内には ない。同気象台予報課の大奈健主任予報官は「現在の観測網で十分 に対応できるが、観測点は多いに越したことはない」という。現 在、県などの雨量データはファクシミリで受け参考にしているが、 専用回線の接続を検討中だ。 ただ、県や報道機関への伝達方法は、今年四月開始の「防災気象 情報提供サービス」で改善した。警報や予報官コメントに加え、刻 々と変わる雨雲の動き、降水量予想などを画像で送る。 ●土砂災害の予報も また気象庁は近く、土砂災害の危険性を予測する新たなシステム を導入する。土中にしみ込んだ降水も考慮した雨量から斜面の崩れ やすさを示す「土壌雨量指数」を活用し、将来は市町村単位で土砂 災害の予報、警報を出せるようにしたい考えだ。広島地方気象台で も今春、土砂災害気象官一人を新たに配置した。 一方、広島市中区の同じ合同庁舎にある建設省中国地建はこの一 年、十数億円を投じ、洪水監視を目的としたレーダーの観測エリア 拡大や、河川、国道沿いの雨量観測網の機能強化を進めてきた。 ●電光表示板を設置 雨量を住民がじかに把握できるような動きもある。県は、住宅地 周辺の県内十五カ所に雨量の電光表示板を設置する。十一人の犠牲 者が出た佐伯区河内地区町内会連合会の大下宣義会長(71)は「行政 と報道機関による迅速な情報提供はもちろんだが、住民の側も雨量 など気象情報にもっと関心を持つ必要がある」と強調している。 |